惑星総督グライムズ

[題名]:惑星総督グライムズ
[作者]:A・バートラム・チャンドラー


※このレビューには前巻までのネタバレがあります。ご注意ください。

 〈銀河辺境シリーズ〉第十三巻です。
 前巻『銀河私掠船団』にて、監察宇宙軍からの密命を帯びて行動することになったジョン・グライムズ。これをきっかけとし、グライムズは監察宇宙軍へ予備役として復帰することになります――但し、周囲には秘密のまま(^^;)
 そして今回彼が送り込まれるのは、移民を奴隷扱いして搾取する惑星リベリアでした。彼はそこで、こともあろうに惑星総督を務めることになってしまったのです。

 惑星〈エル・ドラド〉の私掠船でありながら、海賊行為を働いたことで罪を問われることとなったジョン・グライムズの宇宙船〈シスター・スー〉。それは銀河連邦監察宇宙軍のダミアン少将が〈エル・ドラド〉の私掠行為を阻止するために計画したものでした(前巻参照)。しかしながら、その事実を知る者はほとんどいません。
 査問にかけられるものの、全ての罪は〈シスター・スー〉中で叛乱を起こした者達のせいであったとするよう監察宇宙軍による記憶の改竄が行われ(結構怖い組織です(^^;))、グライムズは晴れて無罪となりました。けれども、その責任までは逃れることができず、彼は十年もの間、船長資格を剥奪されてしまいます。
 そんなグライムズに対して、ダミアン少将は新たな地位を提供します。それは惑星リベリアの行政上の頂点、惑星総督という身分でした。もちろん、ダミアンのことですからタダではありません(笑)
 惑星リベリアは無政府主義者のグループが作り上げた植民地でしたが、その名やルーツとは裏腹に、今では身分階級が横行していました。中でも、超新星化して住民がリベリアへ移民したニュー・カントン星系人(中国系、おそらく「広東」のこと)はほぼ奴隷同然の扱いを受け、不平を押さえ込むために与えられる麻薬〈夢の棒(ドリーム・スティック)〉のせいで身も心もボロボロになってしまう者が後を絶ちません。
 搾取による利益を最も享受しているのは、名目上は民主的に選ばれた女性大統領エストレリータ・オ・ヒギンズ、そして銀河連邦のリベリア駐屯軍司令官バードン大佐だったのです。その横暴を正そうとした前任者の惑星総督ウィッバリーは先日、不可解な飛行船事故で命を落としています。
 そのウィッバリー総督の後釜として、元監察宇宙軍中佐・元民間貨客船船長・元私掠船船長という異例の経歴を持つグライムズが抜擢されたことは、驚きをもって迎えられます。彼が今も監察宇宙軍の命に従っていることは秘密であり、ごく一部の者にしか知らされていなかったのです。
 かくして銀河有数のトラブルメーカー(笑)、グライムズは惑星総督に就任し、現地のOAP(正統無政府主義者同盟)メンバーと協力して変革に乗り出すのですが……。

 本書の注目ガジェットは、惑星リベリアの野生生物です。
 物語中盤、グライムズの乗る飛行船〈ファット・スージー〉はサボタージュにより不時着を余儀なくされ、人里離れた川の中州で立ち往生することになります。
 リベリアの生き物は獰猛なものが多いようで、飛行生物から水棲動物まで、人間の姿を見ると襲い掛かってくるため、無事に不時着したにも拘らずグライムズ達は潰れた飛行船の中に足止めを食らってしまうことになります。
 中でも面白い設定が、ショッカー("shocker")と呼ばれる生物です。外見は緑色の大きなアメーバといった様子の植物で、動きは速くないのですが電撃を放つという恐ろしい生き物です。太陽光を電気エネルギーに変えて蓄積し、電撃で倒した獲物を消化吸収することで糧を得ている模様です。

 グライムズは先の私掠船騒動で更に名を上げたようで、どこに赴いても海賊船長として軽蔑されたり、恐れられたり、あるいは尊敬を受けたりします。
 実際のところ、グライムズの率いていたのは私掠船団(一応、合法)であって海賊船団(違法)ではないのですが、人々にはその区別が付かず、グライムズはしばしば腹立たしい思いをすることになります。
監察宇宙軍への復帰という餌に釣られて、したたかなダミアン少将の言いなりになってしまったグライムズ君。少々気の毒ではあるものの自業自得ですね(^^;)

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