タイム・パトロール

[題名]:タイム・パトロール
[作者]:ポール・アンダースン


 もしタイムマシンが発明され、それを使って時間を遡り過去に干渉することができるとしたら――その行為の善し悪しに関わらず、歴史の改竄により莫大な数の人間に影響を及ぼすこと必至ですね。
 次の段階として当然予想されるのは、そうした身勝手な過去の改変を防止しようとする警察組織、すなわちタイム・パトロールです。彼等は常に歴史を監視し、時間犯罪者が成そうとする歴史への干渉を阻止しようと行動するのです。
 本書はタイトル通り、タイム・パトロールという組織を題材とした時間SFです。タイム・パトロールの概念を発案したのはアンダースン氏ではありませんが、この時間を監視するという警察組織の在り方を確立したという点で大きな意義を持つ作品と言えましょう。
 少々怪しげな求人広告に惹かれて面接を受けたエヴァラード。その就職先は彼が思ってもみなかった組織、タイム・パトロールだったのです。

 一九五四年のアメリカにおいて、次のような求人広告が出されていました。
『二一歳~四〇歳の男子。なるべく独身。軍隊もしくは技術者としての経験を有する身体強健者。海外出張を含む業務で、高給保証』
 退役軍人で、機械技師を務めたこともある青年マンス・エヴァラードは、この「技術研究所」なる組織の面接を受けてみることにします。彼自身が海外へ赴く職業を希望していた上に、どんな仕事内容なのか見当もつかないことに好奇心を刺激されたためです。
 しかし、その職務はエヴァラードの予想を遥かに超えていました。それは時間犯罪者から歴史を守るための組織タイム・パトロールであり、エヴァラードはパトロール員にスカウトされたのです。
 漸新世の北米にある『学院』にて、エヴァラードはタイム・パトロールの一員としての教育を受けることになります。そして、同期で一九四七年出身のイギリス人チャールズ・ウィットコムと親しくなります。ウィットコムは主観時間で少し前(V2号によるロンドン爆撃の際)に恋人を亡くしているため憂いを秘めてはいますが、教養のある好人物でした。
 研修を終えた後に自分の出身時代へ帰って待機していたところ、エヴァラードは新聞記事から歴史が改竄された証拠を発見します。早速彼はロンドン司令部に報告したのですが、司令部は別の事件でてんてこ舞いであったため、エヴァラード自身にその事件を解決するよう指示が下ります。
 新米パトロール員エヴァラードは相棒のウィットコムと組み、まずは一八九四年へ事件の手がかりを掴みに行くのですが……。

 本書の注目ガジェットは、タイム・パトロールです。
 未来のとある時代、発見された時間航行を使って敵対勢力を滅ぼそうと図った集団に対し、更に遥か未来の人種デイネリア人が干渉してそれを阻みました。これがタイム・パトロールの始まりだとされています。
 デイネリア人は百万年以上の未来に属する人々ですが、現世人類とはかなり隔たりがあります。自分達の存在を揺るがすほどの大掛かりなものでなければ、些細な歴史改変には頓着しないようです(彼等の現代人に対するスタンスは、我々が祖先の食虫類に対して抱くそれに相当するとのこと)。これ故にか、時間旅行自体は禁止されておらず、そのときの行動にのみ規制が課せられています。
 タイム・パトロール員は常時歴史を監視し、自分の知る歴史と異なる部分を発見したら、その元凶となっている犯罪者を処分しに過去へと赴きます。時間を遡ることができるわけですから万能のように感じられますが、自分自身の過去に干渉することは基本的に許されていなかったり、その時代の人間に正体を悟られないようにせねばならなかったりと、かなりの制約があるようです。

 本書は元々連作として発表された四つの中編を一冊にまとめたものです。主人公はいずれもエヴァラード君ですが、各話のストーリー的な繋がりは少なめです。
 作中の舞台は歴史上の時代が主になります(過去の改変という題材ですから)。その時代における現実の歴史を知っていると、物語をより楽しむことができるかもしれません。
 なお、作品内では過去への干渉に対して歴史自体がある程度の補正作用を持つとされています。長い歴史の中では、小さな変化は埋もれて未来に影響を及ぼさないようです。そうでなければ、後手後手で歴史を修繕しなければならないタイム・パトロールは到底やっていけないでしょうね。:-)

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