背徳の惑星

[題名]:背徳の惑星
[作者]:A・バートラム・チャンドラー


※このレビューには前巻までのネタバレがあります。ご注意ください。

 〈銀河辺境シリーズ〉第十一巻です。
 前巻『星間運輸船強奪さる』にて訴訟沙汰に巻き込まれ、資金を捻出しなければならなくなったグライムズ君は、嫌々ながらある仕事を引き受けることにします。
 その仕事の内容とは――ある週刊誌のジャーナリストがゴシップのネタを求め、歓楽惑星へ潜り込むのを手伝うことでした。果たして彼らの目論見は無事成功するのでしょうか。(もちろん無理です(笑))

 運輸船〈ブロンソン・スター〉のスカイジャック事件からなんとか無事生還し、再び惑星ブロンソニアへと戻ったジョン・グライムズ。彼自身は被害者であり、宇宙船を無事(?)持ち帰ったことで返還報償金が得られる可能性もありました。
 しかし、それは裁判でうんざりするほどの時間をかけた後の話であり、当座の資金を必要としているグライムズの役には立ちません。そうこうしているうちにも、訴訟で足止めを食らっている彼の借金はますます膨らむばかり。
 そんなおり、ゴシップ週刊誌〈ブロンソン・スター〉(運輸船と同名ですが無関係)の女性ライター、フェネラ・プルインが彼に接触を図ってきます。フェネラの目的は、惑星全体が巨大歓楽街となっているニュー・ヴィーナスバーグへ変名で潜り込み、金持ち達のゴシップをすっぱ抜こうというものでした。何しろグライムズの船〈リトル・シスター〉は金ぴか連絡艇ですから、百万長者を装うにはもってこいだったのです。
 グライムズは御免被りたいところではあったものの、背に腹は代えられずその仕事を引き受けることにします。かくしてフェネラは富くじで一山当てた女教師プルネラ・フェンへと化け、グライムズは彼女に〈リトル・シスター〉をチャーターされたお抱え船長として、共にニュー・ヴィーナスバーグへと向かいました。
 大富豪達に金を浪費させるよう趣向が凝らされた悪趣味な惑星で、多少のいざこざに巻き込まれつつも、二人は疑われずに演技を続けていました。そして、かつてグライムズと諍いのあったドロンゴ・ケイン(『奴隷狩りの惑星』参照)が、またもや奴隷商売をしているらしいという情報を掴みます。
 真相を確かめるため、技術者に変装してケイン配下の宇宙船〈ウィリー・ウィリー〉に近づこうとした二人。けれども、グライムズの顔を知っていた者にばれてしまい、同時にフェネラの正体も発覚してしまいました。
 そして、逮捕されたグライムズは、ニュー・ヴィーナスバーグの闇――人間と猛獣、あるいは人間同士の殺し合いを見世物にする闘技場へと送り込まれてしまうのです。

 本書の注目ガジェットは、ニュー・アリス人です。
 惑星ニュー・アリスとは、ドロンゴ・ケインが今回奴隷貿易の対象としている星で、そこの住人を騙して連れてきては、ニュー・ヴィーナスバーグに売りつけるというあくどい商売を行っているようです。惑星ニュー・アリスそのものは作中に登場しませんけど、オーストラリアから出発した植民船によって作られた〈失われた植民地〉の一つのようです。(このため、オーストラリア生まれのグライムズと言葉のアクセントが似ています)
 銀河連邦では奴隷売買が禁止されていますが、ケインは今回もそれを回避する言い訳を用意しています。実のところ、惑星モルロウビアと事情は同じで、結末も大体同じだったりします(笑)
 全然学習していないようにも思えますけど、ケインは「事態が発覚するまで儲けられればそれでいい」ぐらいに割り切っているのかもしれませんね。グライムズがだんだん羽振りが悪くなっていく(^^;)のに対し、ドロンゴ・ケインは惑星エル・ドラドの提督の座を手に入れている辺り、非常にしたたかな人物なのでしょう。

 惑星ニュー・ヴィーナスバーグ上で、グライムズは蜂型種族シャアラ人の一団から敵対視されることになります。これは『黄金の星間連絡艇』のエピソーに登場した“離れ女王蜂”と親しいグループで、そのせいで逆恨みを受けてしまう訳です。
 グライムズは不思議と蜂人に対して好意的です。しかしながら、毎回かなり酷い目に遭っている(若い女王から夫に望まれたり(^^;))ところを見ると、彼にとってシャアラは鬼門なのかもしれません。

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