星間運輸船強奪さる

[題名]:星間運輸船強奪さる
[作者]:A・バートラム・チャンドラー


※このレビューには前巻までのネタバレがあります。ご注意ください。

 〈銀河辺境シリーズ〉第十巻です。
 前巻『黄金の星間連絡艇』にて、小型宇宙船〈リトル・シスター〉による輸送業を始めたジョン・グライムズ。しかしながら、持ち前のトラブル体質が発揮され、いきなり訴訟沙汰に巻き込まれてしまいます。
 そこで彼は、裁判を待つ間に星間運輸船の管理業務を請け負うことにしたのですが……。もちろんグライムズのことですから、平穏無事に終わるはずはありません(笑)

 連絡艇〈リトル・シスター〉を使って、人間や小物の輸送を請け負うファー・トラベラー・クーリエズ社(但し社員は一人だけ、船も一隻だけ)を立ち上げたジョン・グライムズ。あるとき彼は、犬に似た異星生物レリガンひとつがいを惑星ブロンソニアへ運ぶという仕事を請け負うことになりました。
 荷主から渡された説明書には、レリガンを檻から出さぬよう指示がありました。けれども、犬好きのグライムズはつい情が移って二頭を外に出してしまいます。レリガン達は人懐こく、彼は犬に似たその生き物を大いに可愛がりました。
 ところが、あることをきっかけとしてレリガンは突如凶暴化し、グライムズは身を守るためにその生き物を射殺する羽目になります。当然ながら荷主は立腹し、グライムズに対して訴訟を起こすことになりました。そして、彼の唯一の財産である〈リトル・シスター〉は差し押さえられてしまいます。裁判が続く間は惑星ブロンソニアから離れられず、かつ〈リトル・シスター〉が使えないとあっては、糊口を凌ぐにも事欠く有様です。
 仕方なしにグライムズは、星間運輸船〈ブロンソン・スター〉の管理を引き受けることにします。〈ブロンソン・スター〉はある運輸会社が赤字のため、惑星を周回する停留軌道上へ置きっぱなしにしている船でした。管理の仕事とは、船長の資格を持つ人間がその船で一人だけで生活するという簡単で孤独なものです。
 すっかり飽き飽きしながらも管理業務を続けるグライムズ。しかし、彼に平穏は似合いません(笑) 突如現れたスカイジャック犯にピストルを突きつけられ、グライムズは〈ブロンソン・スター〉を操縦し惑星ブロンソニアを離れることになってしまうのです。
 惑星ダンレヴィンの革命騒動に巻き込まれたグライムズの運命は……。

 本書の注目ガジェットは、惑星ジョオオグナアアン("Joognaan")の整形技術です。
 物語中盤で、グライムズは異星人の住む惑星ジョオオグナアアンへ赴き、その力を借りることになります。ジョオオグナアアン人は猫とカンガルーのキメラのような知的生物で、その公使をかつて〈アッダー〉時代のグライムズが送り届けたという経緯があったようです。
 ジョオオグナアアンは銀河連邦にとって戦略的にも通商的にも価値のない星とされ、あまり他の星系との交易は行われていません。工業文明の初期段階(十九世紀ぐらい?)に位置し、まだ宇宙船も持っていません。但し、医学のレベルだけは極度に発達し、中でも再生医療の分野では地球よりも進歩しているようです。
 ジョオオグナアアン人の整形措置は、溶解液の入った浴槽に全身を浸すことで行われます。肉体を一旦ドロドロに溶かした後、頭の中でなりたい姿を思い浮かべることで望む容姿を手に入れられるという寸法です。元々は再生医療のための技術のようですけど、美容整形にも使える訳ですね。ただ、雑念が多いと怖いことになりそうなので、個人的には御免被りたいところです(笑)

 お話の後半では、ジョオオグナアアン整形措置をきっかけとした、とんでもないトラブルがグライムズを襲うことになります。映画『エイリアン』的なホラーじみた展開ですね。
 グライムズに襲いかかるのは異形の怪物という訳ではないものの、むしろそのせいで余計におぞましい印象です。気の毒に、この件はグライムズ君にとってかなりのトラウマになってしまったようですが、それも無理はないですね(^^;)

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