傷ついた栄光

[題名]:傷ついた栄光
[作者]:A・バートラム・チャンドラー


※このレビューには前巻までのネタバレがあります。ご注意ください。

 〈銀河辺境シリーズ〉第七巻です。
 これまでの任務で様々なトラブルを呼び寄せつつも、度重なる幸運で切り抜けてきた我らがジョン・グライムズ君に、付いた呼び名がラッキー・ブライムズ。けれども、その幸運にもついに翳りが訪れます。
 落ちこぼれの乗組員ばかりの老朽艦を任されたグライムズは、またも〈失われた植民地〉を探す旅に出るのですが……。

 惑星スパルタ、そして惑星モルロウビアと、立て続けに〈失われた植民地〉を発見し功績を挙げたジョン・グライムズは、中佐に昇進することになりました。しかしながら、監察宇宙軍の中には彼のことを快く思わない者が大勢いました。
 調査艦〈シーカーIII〉艦長の任を解かれ、グライムズが新たに命ぜられたのは、更なる大型調査艦〈ディスカバリー〉の艦長の座でした。ところが、この〈ディスカバリー〉は古ぼけた艦で、かつ乗組員は札付きの落ちこぼればかり。副長ブラバム少佐は喧嘩っ早いことで有名、機関長マクモリス機関少佐は有能なものの偏屈、主計長エレン・ラッセル大尉はグライムズと旧知の間柄ながら彼を見下しており、連邦海兵隊分遣隊長スウィントン少佐に至っては市民大量虐殺に関わった過去がある始末です。かろうじて好意的なのは大酒飲みの精神波通信士フラナリー大尉ぐらいで、残りの者はグライムズに対して反抗的でした。
 そうした連中をなんとか纏め上げ、グライムズは〈ディスカバリー〉を発進させます。そして最初の寄港惑星ニュー・メインで、星間貨物船〈サンダウナー〉船長デヴィナスから未発見の〈失われた植民地〉に関する情報を得た後、彼は命令を無視して〈ディスカバリー〉を〈人魚座〉デルタ方面へ向けました。
 かくしてグライムズ率いる〈ディスカバリー〉は、未発見の知的生命体が住む惑星を一つ、そして〈失われた植民地〉を一つ発見することになります。それは本来なら、ラッキー・ブライムズの名前に相応しい快挙のはずだったのですが……。

 本書の注目ガジェットは、惑星ボタニー・ベイです。
 ボタニー・ベイは〈失われた植民地〉で、前巻の惑星モルロウビアと同じく第二伸張期の〈磁石船(ガウス・ジャムマー)〉が遭難して作り上げた居住惑星です。但し、惑星スパルタやモルロウビアほど極端に文明が退行することはなく、テレビ放送や飛行船を飛ばせる技術レベルを維持しています。
 かなり快適な惑星環境で、太陽エネルギーや風水力を発電に使っているため環境汚染もなく、かつ人口過剰もないという、非常に住み心地の良い星のようです。人々は非常に大らかで、当初は〈ディスカバリー〉の来訪を大いに歓迎してくれます――但し、グライムズの引き寄せたトラブルが起こる前までは、ですが(^^;) もっとも、このトラブルはグライムズのみのせいではなく、それ加えてボタニー・ベイ人にも責任の一端があるものなので、一方的に責められるグライムズは少々気の毒です。
 ちなみに、惑星名ボタニー・ベイに関してですが、これはオーストラリアに実在する地名ボタニー湾(シドニーの南)が由来で、十八世紀にかの有名なクック船長がオーストラリアに初上陸した場所です。〈銀河辺境シリーズ〉にはオーストラリア関連の地名やエピソードがたくさん登場しますけど、ボタニー・ベイはそのまんま過ぎですね(笑)
 なお、本巻はエピソード自体が歴史上の事件「バウンティ号の叛乱」になぞらえられているようです。そちらと照らし合わせてみるのも面白いかもしれません。

 さて、これまで銀河連邦監察宇宙軍でトントン拍子に出世してきたグライムズですけれども、ここで人生の大きな転機を迎えることになります。彼の波乱に満ちた物語は、まだまだ終わりません。

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