奴隷狩りの惑星

[題名]:奴隷狩りの惑星
[作者]:A・バートラム・チャンドラー


※このレビューには前巻までのネタバレがあります。ご注意ください。

 〈銀河辺境シリーズ〉第六巻です。
 本巻では『惑星スパルタの反乱』に続き、グライムズ君が宇宙艦〈シーカーIII〉を率いて〈失われた植民地(ロスト・コロニー)〉を訪問するお話です。但し前巻とは異なり、主人公はグライムズの視点に戻っています。
 今回の舞台となるのは、銀河社会と隔絶された惑星モルロウビア。彼らが奴隷商人の搾取を受けぬよう苦闘するグライムズでしたが、実はこの惑星には驚くべき秘密が隠されていたのです。

 惑星スパルタ事件で、未開惑星への武力介入を行ったことを咎められたジョン・グライムズ少佐。情状酌量の余地を認めつつも、審議が始まるときにグライムズがリンディスファーン基地にいない方がいいとバリング大将は考え、彼と〈シーカーIII〉を次なる任務へと送り出します。
 再び〈シーカーIII〉艦長の座に収まり、未発見の〈失われた植民地〉を探すことになったグライムズは、手始めに情報収集を行いました。そして彼は、商船会社〈ドッグ・スター・ライン〉が〈失われた植民地〉を独自発見し、そこから独占的に富を得るため極秘裏に交易を行おうとしているらしいことを突き止めます。しかし同時に、悪名高い奴隷商人ドロンゴ・ケインもまたその情報を入手していました。
 一刻も早く現地へ向かうべきだと判断したグライムズは、マンシェン駆動中に安全係数ぎりぎりまで加速するよう指示を出します。その結果〈シーカー〉は、〈ドッグ・スター・ライン〉社の商船〈シュナウザー〉先んじ、ドロンゴ・ケインの船〈サウザリー・バスター〉とほぼ同時に〈失われた植民地〉である惑星モルロウビアへと到着しました。
 ドロンゴ・ケインに対し武力行使をちらつかせて牽制を行った〈シーカー〉一行。さしもの奴隷商人も違法行為を目の前で行い、監察宇宙軍を敵に回したりはしないだろうと考えたグライムズ達は、やや奇妙なところのあるモルロウビア人との接触を図り、また遅れて到着した〈シュナウザー〉のところへも足を伸ばします。
 ところが、ドロンゴ・ケインには腹案があったのです――自分の奴隷狩りが違法とされないための。モルロウビア人の秘密が明らかになったとき、グライムズは苦境に立たされることになります。

 本書の注目ガジェットは、惑星モルロウビアです。
 前巻登場の惑星スパルタ同様、モルロウビアもまた銀河との交流が途切れた〈失われた植民地〉です。但し、こちらは第二伸張期(宇宙船が光より速く飛行可能となった時代)の遭難船によるものです。
 作中の舞台となる時代では、宇宙船のFTL駆動システムとしてジャイロのお化けのようなマンシェン・ドライブが用いられていますけど、これが発明される前はエーレンハフト・ドライブという磁気を使った駆動系が利用されていたようです。しかしながら、エーレンハフト駆動系はかなり不安定で、植民船の遭難をしばしば引き起こしています。(マンシェン・ドライブも色々と扱い辛い駆動系ですが、安定性では定評がある模様)
 惑星モルロウビアの人々は衣服を着用せず、道具類もそれほど高度なものは使っていないなど、その文明はかなり原始的です。けれども惑星スパルタとは異なり、自分達が植民船でやってきたことは忘れられていません。
 あらすじでも述べた通り、モルロウビア人に関してはなかなか面白い設定がなされています。この点に関してはしっかり伏線も張られていますので、鋭い方でしたら推測可能かもしれません。(私は明かされるまで気付けませんでした(^^;))

 行く先々で騒動を起こすグライムズ君ですけど(笑)、その原因の一つに彼自身のモラルに対するスタンスがあるようです。
 監察宇宙軍の士官として行動している間も、グライムズは軍の行動規範より人道を優先する傾向があります。このことはグライムズが(特に女性から(^^;))好意を寄せられる理由になる一方、多くの敵を作ることにもなります。(本作ではドロンゴ・ケインに恨まれますが、〈シュナウザー〉船長ロジャー・ダンゼランはむしろ好意的)
 第一巻『銀河辺境への道』にて兵学校を卒業したばかりのグライムズは、四角四面で融通の利かない印象でしたが、いきなり初任務で起きた海賊がらみの事件で洗礼を浴びてしまったのかもしれませんね。

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