異次元のエデン

[題名]:異次元のエデン
[作者]:A・バートラム・チャンドラー


※このレビューには前巻までのネタバレがあります。ご注意ください。

 〈銀河辺境シリーズ〉第四巻です。
 前巻『連絡宇宙艦発進せよ!』のエピソードを経て、少佐にまで昇進した我らがグライムズ君。彼が今回訪れることになるのは、異次元世界です。グライムズのトラブルメーカーっぷりは次元を超越してしまうようです(^^;)

 ダルウッド夫人がらみの事件(『ロボットの仕返しは』参照)で裏技的昇進を得ることができた、連邦監察宇宙軍士官ジョン・グライムズ少佐。しかし、その結果彼は連絡宇宙艦〈アッダー〉艦長の任を解かれ、新しい転属先が決まるまで暇を持て余していました。
 そんなおり、グライムズのいるリンディスファーン基地に連邦宇宙捜査官ウナ・フリーマンがやってきます。
 ウナの任務は、海賊に襲われ廃棄されながら、爆弾の不発により高次空間に漂ったままの定期客船〈デルタ・ジェミノルム〉の回収であり、そのためには監察宇宙軍の協力が不可欠でした。けれども、彼女の所属する宇宙保安局は本物の警察組織で、同じ銀河連邦配下ながら(銀河の警察を自認する)監察宇宙軍とは非常に折り合いが悪い状態でした。
 ウナはたらい回しとお預けを食らわされた後、たまたまラウンジで出くわしたグライムズに相談を持ちかけます。グライムズは翌日ダミアン准将に掛け合い、ウナの任務への協力を取り付けることに成功しました――但し、得られたのは宇宙艦ではなく救命艇一隻だけでしたが(^^;)
 〈トカゲ〉級連絡宇宙艦〈スキンク〉で〈デルタ・ジェミノルム〉に近づけてもらった後、グライムズとウナは14型救命艇に乗り込み、客船へと接近します。ところが、乗り移る直前にグライムズが〈スキンク〉に送ろうとしたカロッティ通信がきっかけとなり、不発だった爆弾が爆発してしまったのです。その結果、救命艇はいずことも知れぬ異次元世界へと弾き飛ばされてしまいました。
 グライムズとウナ、二人の命運やいかに。

 本書の注目ガジェットは、機械知性パンツエン("Panzen")及びゼファロン("Zephalon")です。
 グライムズ達が紛れ込んだ世界には地球人に類似した人類が存在するものの、果てしない戦争の結果、星々を破壊したという歴史があるようです。繰り返される愚行に愛想を付かした機械の従者ゼファロンは、人類に対して反旗を翻し、その支配者となります。
 グライムズとウナが宇宙空間で出くわした、惑星並みに巨大な宇宙船型機械知性パンツエンは、ゼファロンの手先として宇宙の漂流者を救出するための捜索者(スイーパー)です。パンツエンは必ずしも人間に対して悪意はないのですけど、保護すべき愚かな存在と見なしています。
 戦争で世界を滅ぼした異次元人類と勘違いされたグライムズ達は、パンツエンに捕獲され、エデンの園のような楽園に運ばれることになります。動物園の動物扱いではあるものの、生存環境としてはなかなか快適な場所のようです――但し、自由がないことに目を瞑れば、ですが(^^;)

 作中では評価の高い宇宙船の超光速駆動システム、マンシェン・ドライブですが、やはりどうにもデリケートな装置のようですね。
 マンシェン駆動系は、その作動中に船の質量を変化させると何が起こるか分からないという特性があります(このため、ロケット推進等が使用不可)。グライムズ達の乗る救命艇は、〈デルタ・ジェミノルム〉への接近のためにマンシェン・ドライブを起動中でしたが、爆発で図らずもそのルールを破ってしまい、別の世界へと飛ばされてしまうわけです。
 他にも、作動中に未来の情景が見えてしまったりと、マンシェン駆動系使用時の注意事項はかなり多い模様です。

この記事へのコメント

  • X^2

    このシリーズは遠い昔に途中まで読んだ記憶があるのですが、この話って最後の結末(つまりどうやって元の世界に戻ったか)が判らないままだったのでは?もっと後の話でその辺の事情が開かされるのか、それとも私の記憶違いでしょうか。
    2011年06月12日 20:28
  • Manuke

    一応、異次元から戻ってくる部分は描かれています。文字通りの「デウス・エクス・マキナ」です(^^;)
    ただ、そこから銀河連邦内へ帰還するところは端折られています(オチとしてはウィットが効いていて秀逸ですけど)。自分達が救出されるよう手は尽くしてあるので、それが上手くいったということなのでしょうね。
    2011年06月13日 01:12

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