エル・ドラドの生贄

[題名]:エル・ドラドの生贄
[作者]:A・バートラム・チャンドラー


※このレビューには前巻までのネタバレがあります。ご注意ください。

 〈銀河辺境シリーズ〉第二巻です。
 前巻『銀河辺境への道』との時間の開きはちょっと不明ですが、この間にグライムズは少尉から大尉にまで昇進しているようです。未だ若手として初々しさは残しつつも、次第にその有能さを開花させ始めている様子ですね。
 そして、彼のもう一つの才能もまた花開きつつあります――すなわち、天性のトラブルメーカーという(笑)

 銀河連邦監察宇宙軍の巡航宇宙艦〈エアリーズ〉の乗員となったジョン・グライムズ大尉。彼は士官の下っ端として雑務をこなし、宇宙船乗りに必要な技能を吸収しているところです。
 その〈エアリーズ〉には今、奇妙な指令が下されていました。惑星〈エル・ドラド〉の援助要請に応じ、その非常事態に対処するというものです。しかしながら、〈エル・ドラド〉は大富豪達が死の惑星を金に飽かせて居住可能にしたという曰く付きの星で、およそ巡航宇宙艦ごときの手助けが必要とは思えず、士官達はそれを不審に感じていたのです。
 〈エアリーズ〉は程なく〈エル・ドラド〉周回軌道へ到着し、先遣隊としてクラヴィスキー軍医大尉及びグライムズがロケット艇〈ダイノソア〉で惑星表面へと降下することになりました。ところが、〈ダイノソア〉が宇宙港の脇にある湖へと着水する間際、艇を操縦するグライムズはそこに水上スキーを楽しむ若い女性の姿を発見します。緊急回避を行う〈ダイノソア〉に、突如として金属製の羽根を持つ大きな鳥が体当たりをかましてきて、ロケット艇は失速し湖に墜落してしまいました。
 緊急脱出装置でからくも難を逃れた二人は、女性がフォン・ストルツバーグ家の王女マルレーネ姫であること、〈ダイノソア〉に体当たりした鳥は警護用のサイボーグ鳥〈見張り鳥(ワッチ・バード)〉だったことを聞かされます。マルレーネは当初、グライムズのロケット艇が彼女を危険にさらしたことを非難しますが、態度を改めて己の非を認めました。
 そしてグライムズは〈エアリーズ〉艦長デイントリー大佐に、惑星〈エル・ドラド〉が抱える問題を説明されます。人工的に作り出された居住惑星〈エル・ドラド〉では、他の生き物が全く問題なく繁殖しているにも拘らず、人間の子供だけが生まれないというのです。原因究明と様々な対策が行われたものの、いずれも功を奏していませんでした。
 その後、マルレーネ王女の招待を受けることになったグライムズ。根っからの庶民である彼は、豪華絢爛なストルツバーグ城での生活に戸惑いつつも楽しんでいたのですが、その間に幾度も命を落としかねない事態に直面します。
 グライムズはまだ気付いていません――それが単なる偶然ではないことに。

 本書の注目ガジェットは、惑星〈エル・ドラド〉の〈警備者(ガーディアン)〉です。
 〈エル・ドラド〉は元々、生物の存在しない荒涼とした惑星でしたが、地球人の大富豪達が環境改造を行い自然豊かな星へと生まれ変わっています。動植物も全て他の惑星から移植されたものですけれども、その中には彼らが狩りを楽しむために持ち込まれた危険な生物も含まれています。
 〈警備者〉は住人を様々な危険から守るために生み出されたサイボーグ動物で、金属製の翼を持つ鳥・〈見張り鳥〉("watchbird")と、小型魚雷のような〈ブリもどき〉("pilot fish":「ブリモドキという種(アジ科の魚)」と「案内魚」のダブルミーニング)が作中に登場しています(他にも〈見張り犬〉が存在)。
 いずれも動物の脳を生かしつつ、機械の補助により主人を守るよう条件付けられています。ボディは金属でできているため非常に強靭で、人間の言葉を喋ることもできますが、元が動物であるせいかそれほど知能は高くないようです。

 グライムズ青年は特殊な能力もコネもないものの機転の利く人物で、様々な困難に立ち向かい、監察宇宙軍の中で次第に頭角を現していきます。やたらと面倒事に巻き込まれてしまうのは、スペースオペラの主人公の宿命でしょうか(笑)
 もっとも、本巻の段階では周囲からはまだ青二才と認識されており、兵士達のやっかみ混じりの悪態を聞いて赤面したりする場面もあります。トラブルばかりでなく色々と良い目にも会っているので、端から見ると腹立たしい存在なのかもしれませんね(^^;)

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