銀河辺境への道

[題名]:銀河辺境への道
[作者]:A・バートラム・チャンドラー


 本書は英国出身のオーストラリアSF作家A・B・チャンドラー氏の代表作、〈銀河辺境シリーズ〉("Rim World series")の第一巻です。
 〈銀河辺境シリーズ〉は、地球人が外宇宙へと進出した未来の銀河を舞台とするスペースオペラ作品群で、本編十五巻、外伝八巻からなる一大シリーズです。もっとも、一括りに「銀河辺境」と名付けられてはいますけど、本編は主人公ジョン・グライムズの活躍を主に描いたものとなっており、これを特に〈グライムズ・サガ〉と呼ぶことももあります。グライムズの出自が連邦監察宇宙軍なので、ややミリタリー傾向はあるものの、どちらかと言えばあっけらかんとした作風ですね。
 後には大変なトラブルメーカーとして宇宙に名を馳せることになるグライムズ君ですが(^^;)、本巻ではまだ学校を卒業したばかりのピカピカの一年生士官です。希望に満ち溢れた若者の行く手には、果たしてどんな人生が待っているのでしょうか。

 兵学校を卒業したての連邦監察宇宙軍少尉ジョン・グライムズに下された指令は、星間運輸公社の商船〈デルタ・オリオニス〉に乗船することでした。
 連邦監察宇宙軍("the Federation Survey Service")は銀河の警察を自認する組織であり、グライムズは乗客ではあるものの士官として丁重な扱いを受けることになりました。もっとも、職務経験はおろか人生経験もまだまだ未熟で、かつ庶民出身であるグライムズ青年は、なかなかスマートに物事を運ぶというわけにはいきません。美人パーサーのジェーン・ペンテコストに助けられつつも、色々といっぱいいっぱいな有様でした。
 そうした航海の最中、不意に事件が発生します。〈デルタ・オリオニス〉の僚船〈イプシロン・セキスタンス〉が宇宙海賊に襲われ、船員が殺害されたのです。そしてその船には、〈デルタ・オリオニス〉船長ジェレミー・クレーヴンと結婚の約束をしていた女性がシニア・パーサーとして乗船していました。
 クレーヴンは怒りに駆られ、たまたま船荷にあった兵器を使って海賊に復讐を果たそうと考えます。グライムズはそれを違法だと訴えたために、船室へ軟禁されることになります。
 しかしながら、ジェーンがクレーヴン船長の復讐劇への同行を志願したことを知ったグライムズは、彼女と別れのひとときを過ごした後に意見を撤回し、自分もクレーヴンの作戦に志願することに決めます。新米とは言え兵器の扱いに長けたグライムズの参加は願ってもないことであり、クレーヴンは彼の経歴を心配しつつもその申し出を受け入れます。
 かくして、初任務からいきなり海賊退治の騒動に巻き込まれたグライムズ。果たして彼は無事それを乗り切ることができるのでしょうか。

 本書の注目ガジェットは、マンシェン・ドライブ("Mannschenn Drive")です。
 〈銀河辺境シリーズ〉の世界では宇宙船の駆動方式が主に三種類あり、このうち最も重要なのが超光速航行を可能とするマンシェン駆動系です。時空を歪め、前進と同時に時間を逆行することで光よりも速く飛ぶという、豪快な駆動装置ですね(^^;) この特徴から、時間ねじまげ装置("time-twister")とも呼ばれるようです。
 マンシェン・ドライブ本体は「不気味に入りくんだジャイロスコープ」と表現され、大小様々なサイズの地球ゴマが組み合わさったような形状をしています。回転を始めると時間を先行し、実体を失ってぼんやりとしか見えなくなります。
 なお、稼働中のマンシェン・ドライブは、長く見つめていると過去や未来の情景が見え、精神に異常を来してしまいます。しかも、ドライブに直接接触すると肉体が裏返しになるというおぞましい死を迎えることになります(即死でないのが余計怖い(笑))。他にも、マンシェン駆動中の宇宙船の質量を(ロケット噴射などで)変化させると何が起こるか分からないなど、有用ですが極めて扱いが難しい装置のようです。

 さて、〈グライムズ・サガ〉にて主役を務めることになるジョン・グライムズですが、現時点では取り立てて特徴のない普通の青年です。顔立ちは厳つくて耳が大きく、さほどハンサムとは言えませんけど、結構あちこちで良い目を見ているようです(^^;)
 グライムズ君の物語は始まったばかりです。ここから先に待ち受ける波瀾万丈な人生を、もちろん彼はまだ知りません。

この記事へのコメント

  • むしぱん

    リムシリーズ! 大好きです。
    DAICONⅣでチャンドラー氏が来てて、サインもらえたらいいなあと思いながら会場の廊下を歩いてたら、ちょうど向こうからチャンドラー氏が歩いて来て、私は鞄から当時発売されたばかりの「惑星総督グライムズ」の文庫本を出して、「プリーズサイン!」と言って、サインと握手をしてもらいました。後で「サイン下さい」の英語は別の言い方が正しいと知りましたが・・・。
    チャンドラー氏の手はさすが元船員らしい、ゴツゴツした感触でした。
    リムシリーズの航宙は、マンシェン駆動系と慣性駆動系の組合せで成り立つところが楽しいですね。
    2011年05月21日 01:10
  • Manuke

    おお、そんな素敵な思い出が……! うらやましいです。

    〈銀河辺境シリーズ〉はガジェットもなかなか凝っていますよね。バックボーンがしっかり設定されているのが面白さに繋がっていると思います。
    2011年05月22日 00:10
  • Kimball

    なは。いまとなっては遠い記憶ですが。

    美人パーサーと船長が無重力でちょめちょめ
    というシーンがあったような...

    し、しつれいしやしたぁ~\(^o^)/

    当時厨房の小生にとっては、
    女性の操(死語)に敏感な年頃で
    ちょっとショックだったなあ。\(^o^)/
    2011年05月28日 09:32
  • Manuke

    グライムズも本巻では純朴さがあって初々しいですね。
    私はマンシェン・ドライブの事故がかなり怖かった覚えがあります。ちょっとトラウマかも(笑)
    2011年05月29日 01:43
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