中継ステーション

[題名]:中継ステーション
[作者]:クリフォード・D・シマック


 本書『中継ステーション』は、牧歌的な田園風景と汎銀河的な宇宙文明という全く風味の異なる二世界の交わりが感慨深いSF小説です。
 シマック氏の作品にはそうした傾向のものが多いようですが、本書も「古き良きアメリカの情景」が物語全体を通じて描かれています。非日常を演出する上で、この形式が大いに寄与していることは間違いないでしょう。
 アメリカの片田舎に住む世捨て人イノック。しかし彼には大きな秘密があったのです。銀河宇宙を結ぶ中継ステーションの管理人という役割が。

 ウィスコンシン州ミルヴィルの片隅に、とある一人の男が世俗との関係を断って暮らしていました。
 男の名はイノック・ウォーレス。郵便配達の老人他幾人かの人間を除けば、彼は誰とも関わることなく生きています。外出するのは一日に一度だけ、家の周囲を散策する程度です。
 それだけならばただの世捨て人と言えるかもしれませんが、彼には一つ謎がつきまとっていました。外見上は三十歳以上には見えないにも関わらず、記録上ではイノックは百二十四歳となっていたのです。CIAはこの異常さに気付き、その謎を探ろうとしますが、解明することはできません。
 それもそのはず、イノックの秘密は地球上のものではなかったのです。彼の家に見えるものは、実は銀河宇宙の旅行に必要な中継ステーションであり、そしてイノックはその管理人だったのでした。
 かつて地球を訪れた異星人ユリシーズにスカウトされ管理人となったイノックは、ステーションを訪れる異星の旅行者を迎え、わずかの間もてなし、そして送り出すという生活を百年もの間繰り返して来たのです。
 この時代、世界情勢は悪化の一途をたどっていました。迫り来る核戦争の恐怖に人々が怯えていることにイノックは心を痛めています。しかし、彼が銀河宇宙と関わりがあることは秘密にしなければならず、イノック個人は地球と銀河宇宙の狭間で葛藤に揺れていたのでした。
 そんなある日、近所に住む聾唖の娘ルーシー・フィッシャーが、父親に虐待を受けてイノックの元に救いを求めてきます。イノックは取り決めに違反すると承知していながら、彼女をステーションにかくまってしまうのです。
 そして事態は動き始めます。

 本作の注目ガジェットは、中継ステーションです。
 作品世界では、この中継ステーションが銀河宇宙を旅行するためになくてはならないものとされています。宇宙船を使うのではなく、複数の中継ステーション間をテレポーテーションのように瞬間移動することによって旅行する訳です。
 ただし、この瞬間移動の仕組みは少々恐ろしげです。移動元のステーションにある解析化装置が旅行者の肉体をスキャンし、衝撃パターンを作ります。衝撃パターンは瞬時に移動先のステーションへ送られ、実体化装置が元と寸分違わぬ旅行者を作り上げます。つまり、旅行先に自分のコピーを作ってしまうのですね。で、元の場所にあった旅行者はどうなるかと言うと……しかばねとなって廃棄処分されます(^^;)
 中継ステーションの中では、イノックは年を取りません。ごく普通に活動できるのに、加齢だけは起きないようです。このため、外出するわずかな時間を除いて外の世界とイノックの肉体年齢はずれていってしまうわけです。なんだか、かなりうらやましい環境ですね。

 このお話はどちらかと言うと地味な展開ではありますし、驚天動地の仕掛けも存在しません。
 ただ、本書には不思議と印象に残るシーンが数多く存在します。何の気なしに読み返してみたくなるような、そんな魅力です。
 シマック氏の綴る、どこか懐かしい雰囲気を醸し出す物語をお楽しみください。

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