リングワールドの玉座

[題名]:リングワールドの玉座
[作者]:ラリイ・ニーヴン


※このレビューには前作『リングワールド』及び『リングワールドふたたび』のネタバレがあります。ご注意ください。

 本書は〈ノウンスペース・シリーズ〉に属する物語であり、『リングワールド』/『リングワールドふたたび』に続くリングワールドものの第三弾です。
 前作及び前々作とは異なり、物語は二部構成になっています。第二部は今までと同じくルイス・ウー視点から捉えられたお話ですが、第一部はリングワールド住人同士の関係を主とする物語となっています。多種多様に分化した人類種族のコミュニケーションが面白く、ハイ・ファンタジーを思わせる内容ですね。
 ルイス・ウー達の働きにより、全壊という大災害を逃れた巨大世界リングワールド。しかし、そこには新たなる危機が迫りつつあったのです。

 リングワールドがバランスを崩すという危機をルイス・ウー、〈至後者〉、ハミイーが救ってから十一年後――かつてルイスと一時期行動を共にした〈機械人種〉のヴァラヴァージリンは、通商のために訪れた〈草食巨人〉の集落で恐ろしい事態が発生しつつあることを知ります。他の人間種族を襲ってその生き血をすする種族・吸血鬼が大繁殖を始めていたのです。
 吸血鬼は知性を持たないのですが、彼等が発するフェロモンを嗅ぐと人間種族は魅了されてしまうため、非常に危険です。元来夜行性であり、太陽光を嫌うため昼間は行動できないのですが、前巻でルイスが行ったサンフラワー駆除のための霧生成が裏目に出てしまい、吸血鬼の行動範囲が広がってしまったのでした。
 共通の敵である吸血鬼に対して、ヴァラは〈草食巨人〉を始めとする近隣の人間種族と協力し、その駆除を目指して行動を始めます。
 一方、〈至後者〉の元を去ったルイス・ウーは、細胞賦活剤の存在しないリングワールドの上で急速に老化しつつありました。彼は〈大海洋〉を十年かけて渡り終えた後、あちこちの集落を訪れては旅人として歓迎を受ける、そんな暮らしを続けていたのです。
 ルイスが〈機織り〉と呼ばれる種族の元に逗留していたとき、袂を分かった〈至後者〉が突如、彼に連絡を取ってきました。なんと、リングワールド星系に外宇宙から宇宙船が訪れたと言うのです。
 吸血鬼の繁殖、そして宇宙からの訪問者――しかし、真に差し迫った危機はその背後に隠れされていたのでした。

 本書の注目ガジェットは、リングワールド上の諸人類種族です。
 前巻でのルイス達の推測が正しければ、リングワールドはパク人のプロテクターにより建造されたものと考えられます。地球表面積の三百万倍という広大な居住地には、彼等の子孫たるブリーダーの命を脅かすような生物は存在しません。まさにパク人の楽園です。
 しかし長い年月の経過により、それら生態系上の空欄はブリーダーが進化した数々の人類種族が占めるに至ったようです。元来パク人ブリーダーは知性を持たない、ホモ・ハビリスに相当する種族ですが、現時点でのリングワールド住人はそのほとんどが知性を獲得しています。
  本書では、そうした種族が数多く登場します。草類を食べる大柄な人種〈草食巨人〉(グラス・ジャイアント)、機敏で視力の良い肉食の〈赤い牧人〉(レッド・ハーダー)、海の中に定住する〈海の人種〉(シー・ピープル)や河川を住処とする〈漁師〉(フィッシャー)等々。更に、死骸のみを食する〈屍肉食い〉(グール)なども存在します。
 こうした人々のうち吸血鬼(ヴァンパイア)だけは特異な存在で、知性を持たないために同等の存在とは見なされません。猛獣が事実上存在しないリングワールドで、唯一人間を襲う生物のようです。
 これらの種族が交流する様は、エルフやドワーフといった亜人類が登場するハイ・ファンタジーを思わせてくれます。それぞれの人間種族は互いに言葉が通じなかったり、利害が対立したりすることもあり得ますが、この解決方法として『リシャスラ』と呼ばれるコミュニケーションが存在します。この『リシャスラ』、実にヒトという種族らしい手段と言えるのではないでしょうか(笑)
 また、上記の人間型種族に加え、〈大海洋〉に浮かぶ惑星地図上にクジン人及び火星人が存在することが言及されています。但し、勢力的にはどちらも小規模のようです。

 リングワールドという舞台の上には、もう一つ重要な存在があります――言わずと知れたプロテクターですね。
 パク人およびその子孫は、壮年期に生命の樹の根を食べることにより超知性を持つプロテクターへと変化します。ノウンスペースに存在する数々の種族と比較しても飛び抜けて知性が高く、強靭な肉体を持ち、基本的に不老不死です。
 但し、その行動原理は唯一、自分の子孫を守ることだけです。あまりにその本能が強いために、知性によりその選択が間違いだと分かっていても子孫を傷つける行動を取ることができません。孫を盲目的に溺愛する超人じじばば、といった手合いなのです(^^;)
 一見すると非常に冷徹に見える彼等ですが、ユーモアを解したりするという人間的な側面を確かに残しています。〈ノウンスペース・シリーズ〉中でもとりわけ魅力的な存在だと言えるでしょう。

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