リングワールドふたたび

[題名]:リングワールドふたたび
[作者]:ラリイ・ニーヴン


※このレビューには前作『リングワールド』のネタバレがあります。ご注意ください。

 本書はラリイ・ニーヴン氏の代表作〈ノウンスペース・シリーズ〉に含まれる作品であり、同時にシリーズ最高峰と言える『リングワールド』の続編です。
 元々ニーヴン氏は『リングワールド』の続編を書かれるつもりはなかったようですが、読者の方々から様々なお便りをもらい、執筆を決意されたとのこと。中でも、「リングワールドは力学的に不安定」という意見が、そのまま逆手を取ってストーリーの中核になっているのはお見事です。
 かつてリングワールドを探検したルイス・ウーは、パペッティア人〈至後者〉の思惑により再びこの巨大構造物を訪問することになります。しかしこの時、リングワールドには大変な危機が訪れていたのです。

 前回の探検から二十三年後、ルイス・ウーは電流中毒者(ワイヤヘッド)と成り果てていました。
 〈ノウンスペース・シリーズ〉世界では、脳の快楽中枢に直接電流を流す電流中毒という悪癖が古くから存在します。麻薬やアルコールの中毒に似たものですが、副作用は一切ないというものです。
 肉体的には健康なものの電流漬けの怠惰な生活を送っていたルイスは、唐突に現れたパペッティア人の〈至後者〉(ハインドモースト)に拉致されてしまいます。そして〈至後者〉の宇宙船には、共にリングワールドを旅したクジン人〈獣との話し手〉(今はハミイーと名乗っています)もまた捕らえられていたのです。
 〈至後者〉はかつてパペッティア人の最高指導者でしたが、政権交代によりその座を追われていました。彼は再び政権に返り咲くため、リングワールドにあると言われる物質変換機を必要としています。そのための探検を代行してもらうために、〈至後者〉は二人を捕らえたのでした。
 宇宙船でリングワールドへと接近した一行ですが、ここでルイスとハミイーは驚きの光景を目にします。なんと、リングワールドの中心が太陽からずれ始めていたのです。〈至後者〉の計算によると、あと一年でリングワールドは内側を回るシャドウ・スクエアにぶつかり、リングワールド上の全生命は滅亡してしまうとのことでした。
 推定三十兆人の死という超大事故を前に、無論ルイスとしてはそれを放置しておくことなどできません。けれどもルイス自身は電流中毒、〈至後者〉は物質変換機にしか興味がなく、ハミイーもどちらかと言うと自分の名誉回復を重視しているありさまです。
 果たして、リングワールド消滅という未曾有の災害を彼等は防ぐことができるのでしょうか?

 本書の注目ガジェットは、やはりリングワールドでしょう。
 半径一億五千万キロメートル、幅百六十万キロメートルという途方もなく巨大なこのリング状物体。前作『リングワールド』では謎のままだった建造者が、本作で明らかにされます。
 リングワールド表面には、山や川、海等の地形を形成するための型が彫り込まれています。リングワールドの厚みは三十メートル程度しかないため、さすがに自然状態で地形を形成することは不可能であり、あらかじめそれらが型として作られているわけですね。
 こうした地形の一つに、リングの端から端まで届く程の広大な海、〈大海洋〉(グレート・オーシャン)があります。非常に面白いのは、この海に浮かぶ形で近隣の惑星を模した島が配置されていることです。地球や火星、クジン、ジンクスといった〈ノウンスペース・シリーズ〉に登場する惑星が、言わば実物大の地図として刻まれているわけです。さらに、クジン地図にはクジン人、火星地図には(滅亡した)火星人が暮らしています。
 なお、前述の通りリングワールドは力学的に不安定で、大きめの太陽フレアでバランスを崩してしまうとのこと。このため、リングを姿勢制御するための装置が不可欠となります。ここがストーリーの肝です。

 この巻では、前作でリングワールドに留まったティーラ・ブラウンのその後も登場します。ある意味彼女こそが主役と言えるかもしれない、最重要人物ですね。
 『リングワールド』で提示された、〈ノウンスペース・シリーズ〉世界における最強の異能力・幸運の遺伝子。その持ち主であるティーラの本書での扱われ方を考察してみるのも面白いかもしれません。

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