リングワールド

[題名]:リングワールド
[作者]:ラリイ・ニーヴン


 超巨大構造物――その呼び名に値するSF中ガジェットはいくつも存在します。スペースコロニーしかり、軌道エレベータしかり……。
 しかし、このリングワールドほど巨大で、そしてイマジネーションをかき立ててくれる存在はそう多くないのではないでしょうか。
 本書はニーヴン氏の壮大な宇宙SF〈ノウンスペース・シリーズ〉の一エピソードであり、シリーズ最大の白眉と言っても構わないでしょう。
 恒星を取り巻く、半径一億五千万キロメートル・幅百六十万キロメートルもの超超巨大なリボン状物体、リングワールド。その謎を解き明かすべく人間、クジン人、そしてパペッティア人のチームが調査に当たるのです。

 二百歳の誕生日を迎えた男、ルイス・ウー(細胞賦活剤のおかげで青年同様の肉体を持つ)の元を、かつてノウンスペース(人類の既知宇宙領域)から姿を消したパペッティア人が訪れました。
 そのパペッティア人・ネサスはルイスに対し、ある秘密の探検調査に加わって欲しいと依頼してきたのです。少々パーティーに飽き飽きしていたルイスは、探検に加わることに同意します。
 彼等はその後、凶暴なクジン人の〈獣との話し手〉(スピーカー・トゥ・アニマルズ)、及び若い人間の女性ティーラ・ブラウンをチームに加え、パペッティア人の住処へと移動しました。そこでルイス達に、探検の目的地が明かされます。
 ある理由により、パペッティア人は種族ごとノウンスペースから遁走中なのですが(『中性子星』収録の『銀河の〈核〉へ』参照)、その彼等の行く手に奇妙なものが見つかったのです。それが恒星の周囲に巡らされた超巨大円環・リングワールドでした。
 パペッティア人は非常に臆病な種族で、自分達で直接リングワールドの探検をするなどというのは論外なのです。このため、ルイス達にその調査を依頼したというわけですね。
 宇宙船ライイング・バスタード(嘘つき野郎)号に乗り込んだ四人は、リングワールド星系に接近し、その建造者と接触を図ろうとします。しかし、リングワールドは電波そのたの呼びかけに全く応えようとしません。
 業を煮やした一行は、リングワールドを更に観察しようとライヤー号の進路をリングの内側へと向けたのですが……。

 本書の注目ガジェットは、言うまでもなくリングワールドです。
 あまりに大きすぎてキロメートルでは把握し辛いため、別の単位で説明しましょう。すなわち、リングの半径は一天文単位(太陽-地球間の距離)、幅は地球直径の百二十倍、内側の面積は地球表面積の三百万倍となります。パペッティア人でなくとも畏怖するサイズですね(^^;)
 リングは毎秒千二百キロメートルという猛スピードで回転しており、その結果遠心力により地球上とほぼ同じ重力が疑似的に発生しています。
 リングの縁には千六百キロメートルもの高さの壁があり、内側には大気が満ちています。また、リングの更に内側にはシャドウ・スクエア(遮光板)が存在しており、太陽光を遮ってリングワールド上に昼夜を生み出しています。
 驚くべき構造物ですが、単なる荒唐無稽な絵空事とばかりは言い切れません。このリングワールドは、宇宙物理学者フリーマン・ダイソン氏が予想した文明の終着点、「ダイソン球殻」のバリエーションと考えることができるのです。もしかしたら銀河のどこかに、実際にリングワールドが存在している可能性さえあります。あるいは、我々自身が太陽系をリングワールドに作り替えることになるのかも……。
 但し、このリングワールドは力学的に少々不安定のようです。将来リングワールドを建造するおつもりの方は、ずれを補正するための推進装置をお忘れなく。:-)

 〈ノウンスペース・シリーズ〉には幾多の風変わりかつ魅力的な異星人が存在します。本書ではパペッティア人とクジン人が登場していますね。
 パペッティア人(人形師の意味)は、首がない三本足のケンタウロスのような姿をした生物です。両肩からは関節のない腕が生えていますが、その先端に付いているのは手ではなく小さな顔になっています。目と口が一つずつ付いた小さな顔は、両手に指人形(パペット)をはめているように見えるため、パペッティア人と名付けられたようです。草食動物のパペッティア人は種族全員が異常なまでに臆病で、他種族と直接会うことすらできません。探検に同行するネサスは例外で、パペッティア人の中では気の触れた者と扱われています(^^;)
 逆に、クジン人は非常に暴力的な種族です。外観はオレンジ色の直立した猫科大型獣といった様子で、過去に地球人と幾度も戦争を引き起こしています。もっとも、強靭な肉体と高い戦闘力を持つため、探検の仲間としては頼りになる存在です。

 また、ルイスと同じく地球人であるティーラ・ブラウンですが、彼女も実はとんでもないキャラクタですね。登場時は単なる軽薄な娘にしか見えませんけど、『リングワールド』のストーリーで重要な役目を果たすことになります。
 緻密な舞台設定で読者の脳裏にビジュアライズされる巨大世界リングワールド。そこを舞台に繰り広げられる奇想天外な物語をぜひお楽しみください。

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