人類狩り

[題名]:人類狩り
[作者]:ディーン・R・クーンツ


 ディーン・R・クーンツ氏は、ミステリやホラーといった様々なジャンルをミックスした作品を得意とするベストセラー作家さんです。いくつかの作品は映画化され、また映画脚本も手がけられています。
 そんなクーンツ氏ですが、小説家としての出発点はSFにあったようです。本書『人類狩り』(原題:"Beastchild")はかなり初期の作品ではあるものの、サスペンスやホラーの要素を含むスピーディで手に汗握るお話に仕上がっています。
 物語は主に、地球人類と敵対しこれを滅ぼした異星人の視点から描かれます。本来助けるべきではない地球人の子供を見殺しにできなかったナオリ族のフラン。西にあると言われる人類の〈避難所〉を目指す二人と、それを追う恐るべき〈追跡者〉との、命を懸けた追跡劇が始まります。

 爬虫類型知的種族ナオリ族は、恒星間宇宙で地球人類と接触を果たしました。しかし、冷徹でユーモアのかけらもなく想像力も示さない不気味な地球人類に対し、ナオリ族は相手を決して相容れない脅威と位置付け、絶滅戦争を仕掛けることになります。
 それから百七十年後。ナオリ族は人類をほぼ絶滅へ追い込むことに成功しました。わずかな残党が生き延びているらしい様子はあるものの、地球上の都市はほとんどが廃墟と化しています。
 ナオリ族の男性フランは、滅んだ人類都市の調査を行う発掘隊の隊長でした。彼は出土する文化の断片が、自分の知る冷酷な地球人と食い違っていることに戸惑っていました。
 そんなフランがある貯蔵庫の地下室へ入ったとき、ナオリ族が対人類用に送り込んだ大きなミュータントねずみに襲われたものの、間一髪のところで地下室に潜んでいた地球人の子供に命を救われます。
 子供の名はレオ、十一歳くらいの少年でした。レオは、自分がナオリ族に引き渡されることを覚悟しつつも、フランを助けたことを後悔していません。
 人類を発見次第〈中央委員会〉に報告すべしと義務づけられていたフランは、けれどもレオを引き渡すことがどうしてもできませんでした。それが種族に対する反逆だと知りつつ、彼は少年を地下室に匿ってしまうのです。
 ところが、その秘密は精神医バナログとの面会中に発覚してしまいました。不思議と協力的なバナログを拘束し、フランはシャトルクラフト(浮上する車)を奪ってレオと共に廃墟を逃げ出します。
 ナオリ族上層部は無論それを許しませんでした。彼らは、戦闘用に肉体を強化された特別なナオリ・〈追跡者〉を目覚めさせ、反逆者と地球人を抹殺すべくその後を追わせます。
 一方、フランはレオと親交を深めるうちに、何故自分の知る邪悪な地球人と目の前の純真な少年がこうも異なるのか、という疑問に対する解答を得ます。その滑稽かつ悲劇的な真相とは……。

 本書の注目ガジェットは、ナオリ族("naoli")です。
 ナオリ族は鱗に覆われたとかげ型種族で、体型は概ねヒューマノイドですが、尻尾が生えています。男女の性別があり、子供は有袋類のようにかなり未熟な状態で産み落とされた後、〈育児穴〉中の〈母泥〉(半ば生きた胎盤)で育てられるようです。
 設定として面白いのは、肉体の制御を司る有機調節頭脳と、知性の源である超知能が分離されている点です。睡眠時、ナオリ族の知能は一切の外部刺激から遮断され、夢も見ない死のような眠りに就きます。このせいで危機が迫ってもなかなか目が覚めないというのは、生物としてどうかと思ってしまいますが(^^;)
 ナオリ族は皆、幼少時に頭蓋骨へ装置を埋め込むことで得られるテレパシー的な相互通信手段、〈フェーザーシステム〉を備えています。主に公式の通知などに用いられていますが、個人間でも遠距離対話可能です。位置を特定できるようなことはありませんが、油断すると心の中に秘めたことまで知られてしまいます。
 ナオリ族のうちごく一部は、胎児の段階から選別されて特別な訓練を受け、肉体改造を施されて〈追跡者〉となります。〈追跡者〉はバウンティ・ハンターと死刑執行人を合わせたような存在で、犯罪者や敵を追いつめて殺すため人為的に作り出された怪物です。非常に残忍かつ執念深く、ナオリ族の一般人からも疎まれている模様です。

 生態が人類とは大きく違う異星人の割には、ナオリ族の内面は少々人間臭過ぎるきらいはありますが、そこはお約束ということで(笑)
 逃避行を続けていくうち、フランとレオは疑似的な父子関係となっていきます。フランは強靭で寿命の長いナオリ族ではあるものの、暴力が不得手だったり、高所恐怖症だったりと少々頼りないキャラクタですが、レオ君のために頑張る姿はなかなか感動的です。
 一方、二人を追う〈追跡者〉ドカニルは常軌を逸した残忍さを持つ恐ろしい存在であり、ストーリーを盛り上げてくれます。ドカニルにはナオリ族の精神医バナログが同行しており、彼も物語中で重要な役割を担っています。
 非常にアップテンポのお話で、度肝を抜くような展開こそないものの、印象的なシーンが多数あります。エンターテイメント性の高い、良作の逃走劇SFです。

この記事へのコメント


この記事へのトラックバック