恐怖のペルシダー

[題名]:恐怖のペルシダー
[作者]:エドガー・ライス・バロウズ


※このレビューには前巻までのネタバレがあります。ご注意ください。

 〈ペルシダー・シリーズ〉第六巻です。
 本巻では、主人公がシリーズ開始時のデヴィッド・イネスへと戻ります。視点も三巻以降の三人称ではなく、一・二巻と同じデヴィッドの一人称で綴られており、原点回帰的な位置付けなのでしょう。
 また、冒頭で物語の舞台が一九三九年、デヴィッドとペリーが「鉄製もぐら」でペルシダーへやってきて以来三十六年が経過したことが明記されています。デヴィッドが五十六歳、ペリーが百一歳とのことですが、二人とも一向に老化の兆しは見られないようです。ペルシダーに客観時間がない為に、体が年齢を重ねることを忘れてしまっているのでしょうか(^^;)

 ペルシダー帝国首都サリから出発した、皇帝デヴィッド・イネス率いるフォン・ホルスト捜索隊は、遠く離れた地ロ‐ハールでその目的を成し遂げました。(明示されていませんが、おそらくフォン・ホルストはそのまま族長としてロ‐ハールに留まった模様。ジェイスン・グリドリーは既に地上へ帰還)
 そして捜索隊がサリへ帰還する途中、川の上で一行は蛮族に襲われ、デヴィッドはオーグ族の捕虜となってしまいます。
 オーグは男女の役割が逆転しており、女は筋骨隆々で髭モジャ、男はひ弱で無毛という民族でした(デヴィッドはオーグ女性達から「セックスアピールがまったくない」と評されてしまいます(笑))。そのまま奴隷としてこき使われるところを、同じく捕らえられていたゾラム(前巻のヒロイン・ジャナの故郷)の男ズォルと共に逃げ出しました。
 けれども、オーグから逃れて自由の身になったのも束の間、二人はまたも別の人間種族に捕まってしまいます。今度の相手はジュカン族、比較的高度な文化を築いているものの、ことごとく頭のおかしい人間ばかりという厄介な民族です(^^;)
 同じく囚われの身である他民族の女性クリートを除き、宮殿に住む人間は全てジュカン族で、中でも王ミーザは危険な人物でした。二人は自由にしてもらえるよう掛け合ってはみたものの、ミーザの逆鱗に触れてしまい、デヴィッドは真っ暗な独房に幽閉されてしまいます。しかしながら、ジュカン族が愚かだったことが幸いし、デヴィッドは宮殿から抜け出すことができました。
 そこでたまたま、ミーザ王の息子モコが女性に無理強いしようとしていた場面に出くわし、デヴィッドはモコを倒しました。驚いたことに、デヴィッドが助けた女性こそは、彼の妻である美女ダイアンその人だったのです(ペルシダー狭過ぎ(^^;))。
 二人は協力して、今なおジュカン王の宮殿に囚われているズォルとクリートを助け出そうと試みるのですが……。

 本レビューでは〈ペルシダー・シリーズ〉に登場する知的生物に触れておきましょう。
 地底世界ペルシダーでは、人間以外にも多数の知的種族が登場しています。多くは霊長類型、特に人間の近縁種に相当するようですが、中には全く異なる生物も含まれます。
 その筆頭と言えば、第一巻・第二巻で登場したペルシダーの支配者、体長二メートルの翼竜型種族マハールですね。ペリーの説明によると、オリティック中期("the Middle Olitic":詳細不明(^^;))のランフォリンクス(翼竜の二大グループの片方、歯を持つ)が巨大化したものとのことです。
 マハール族はペルシダー最高レベルの文明を築いており、地下に掘られた都市には太陽光をレンズや反射鏡で導いた照明、そして空調設備があるようです。科学・工学・美術・哲学といった文化を発達させ、食人種族ではあるものの人間(デヴィッド)に対して礼儀を尽くす場面もあります。
 その優秀さは知能だけに留まらず、空を飛び、水中を泳ぎ、催眠術で獲物を魅了したりと、正直に言ってデヴィッド達が彼らを追い払えたのが不思議なくらいですね(^^;)
 もっとも、第三巻以降は言及すらほとんどなく、本巻ではデヴィッド自身が、マハールが本当にペルシダー全土を支配していたのかという点に疑念を挟んでいます。非常に有力な種族ではあるものの、繁殖方法にトラブルを抱えていたようなので、個体数が多くはないのかもしれません。
 また、同じく爬虫類型種族として第四巻の蛇人間ホリブがいます。マハール族はほぼ翼竜そのもののフォルムであったのに対し、ホリブは鱗が生えたヒューマノイド・タイプです(古生物学者デール・ラッセル氏が一九八二年に提唱した恐竜人類ディノサウロイドに似ているかも)。こちらは「冷血」という言葉から連想される通りの、愛情をかけらも持たない性質に設定されています。マハールはシリーズ冒頭では残忍な恐るべき敵として描かれますけど、このホリブと比較するとまだマシな種族ですね。:-)
 その他、森に棲む人猿、ゴリラ型のサゴス族、そして(説明を先取りしてしまいますが)次巻登場の剣歯人("sabertooth men")辺りは霊長類に属しているようです。一方、第二巻の羊型種族・獣人、前巻の牛人族ガナクは、いずれも哺乳類ではあるものの霊長類との繋がりは薄いように思われます。
 これら以外の、地下人間コリピーズを始めとする亜人類は、おそらく人類の近縁もしくは人類自体から進化したものなのでしょう。本巻でも身長二・一メートルの人食い巨人・アザール族("Azar / Azarians")が登場しています。
 ペルシダーには多種の知的生命が棲息していますが、その大部分はペルシダー人と同じ言語を使っているためコミュニケーション可能です。例外は人猿と剣歯人(この二種族はより原始的な言語?)、そしてマハール族(聴力がなく、四次元知覚で会話)です。
 こうして並べてみると、やはり突出してユニークかつ魅力的なのはマハールですね。一・二巻のみの登場ではありますが、〈ペルシダー・シリーズ〉を代表する存在と言えるのではないでしょうか。詳細は不明ですけど、ERB, Inc.(バロウズ氏の著作を管理する会社)公認の二次創作"Mahars of Pellucidar"ではマハール族がフィーチャーされている模様で、ファンの間でも人気は高いようです。

 さて、本巻の原点回帰的な設定なのですが、個人的にはあまり成功とは思えません(^^;) 展開がかなりマンネリ気味な点に加え、デヴィッドの一人称で語られるためにトーンが一本調子と、読んでいて少々退屈なのが正直なところです。
 かつ、それぞれヒロインのツンデレっぷり(笑)がアクセントになっている他の巻と比べると、デヴィッド君と美女ダイアンの夫婦仲は良好で、波風も立ちません(障害はいくつも立ちはだかりますが)。また、後半ではダイアンが登場しなくなってしまうのも痛いですね。
 この辺りを反省点とされたのかどうかは分かりませんけど、次巻にして最終巻『ペルシダーに還る』では、本書と対照的な部分が多いように感じられます。

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