栄光のペルシダー

[題名]:栄光のペルシダー
[作者]:エドガー・ライス・バロウズ


※このレビューには前巻までのネタバレがあります。ご注意ください。

 スリルに満ちた広大な地底世界を描いた〈ペルシダー・シリーズ〉第五巻です。
 本巻は『地底世界のターザン』を補完するお話で、前巻冒頭で一人行方知れずになってしまった空軍士官フォン・ホルストの冒険が描かれます。従って、タイムライン的には前巻と並行しているようです。
 フォン・ホルストはこれまでの主人公達と比べてやや軽めの性格のようで、冗談を口にしてはペルシダーの原始人達を面食らわせる場面が幾度かあります(^^;) また、格闘技の達人でもあり、体格で勝るペルシダー人を拳闘・レスリング・柔術("ju-jitsu")の技で圧倒してしまう辺りは痛快です。前巻での〈ジャングルの王者〉ターザンにも決して引けを取らないタフガイぶりを見せてくれる、冒険譚の主人公らしいキャラクタですね。

 ターザン捜索隊が森で剣歯虎の大群に遭遇した後、O‐二二〇号の飛行士フォン・ホルスト中尉は一人だけ仲間達とはぐれてしまいました。森の中をさまよっていた彼は、あるとき巨大な翼竜(?)トロドンに襲われ、空へ連れ去られてしまいます。
 トロドンはフォン・ホルストを巣穴へ運んだ後、首に毒を注入してその体を麻痺させてしまいます。まるでジガバチのごとく、彼を雛の生き餌とするつもりだったのです。
 巣の中には、同じく体の麻痺したペルシダー人が多数捕らえられており、フォン・ホルストは餌にされる待ち行列の最後尾に置かれました(^^;) そこで彼は、一人だけ冷静だった隣の青年ダンガーと親しくなり、ペルシダーの言葉を教わります。
 他の犠牲者達が卵から孵ったトロドンの雛に食べられるのを横目で見ながら、友情を温めつつ自分達の死を待っていると、次第にフォン・ホルストは麻痺が解けてくるのを感じました。彼は服を着ていた分、毒の回りが弱かったのです。そして、回復はぎりぎりのところで間に合い、フォン・ホルストはまだ体の麻痺したままのダンガーを連れてトロドンの巣穴からの脱出に成功します。
 ダンガーの回復を待つ間にフォン・ホルストが狩りをしていると、一人の男が剣歯虎に襲われているところに出くわしました。フォン・ホルストが助けたその男はスクルフと名乗り、お礼として自分の属するバスティ族へ歓迎すると申し出ます。ダンガーの麻痺が治ると、三人はバスティ族の住む峡谷へと向かうことにしました。
 しかし、スクルフはダンガーとは異なり卑劣な男でした。断崖へ着くなり、スクルフは二人をバスティ族の奴隷にしてしまいます。
 けれども、不屈の青年フォン・ホルストは決して諦めません。彼は奴隷とされているペルシダー人をまとめ、バスティ族から逃れる術を模索するのです。

 本巻固有のSF的設定はあまり登場していませんので、代わりにシリーズ全般に登場する、ペルシダー内の生物について少し触れておきましょう。
 地底世界ペルシダーには、地上では既に滅んでしまった生物が多数生き延びており、複雑な生態系を形成しています。中にはペルシダー内で進化したと思われる種も存在するようです。
 絶滅生物の中で最も古いものは、おそらく第一巻登場の巨大両生類ラビリントドンですね。作中の表記から類推すると、その中でもマストドンサウルス辺りでしょうか。(全長六メートルにも達する、ワニに似た凶暴な両生類で、三畳紀の食物連鎖の頂点に位置したと言われています)
 中生代からはもちろん、恐竜(ディプロドクス、トリケラトプスやステゴサウルス、ティラノサウルス)、翼竜(プテラノドン)、魚竜(イクチオサウルス)、首長竜(プレシオサウルス)といった古生物ファン垂涎の巨大爬虫類が多数競演しています。中でも翼竜は、デヴィッド君が退治するまではペルシダーの支配者として君臨していたマハール族を輩出、という栄誉を得ています(笑)
 新生代からの参加組は、超巨大ナマケモノ・メガテリウム、恐るべき人食い虎・剣歯虎(サーベルタイガー、具体的な種は不明)、狼犬ヒエノドン、マンモス、大型牛ボス・プリミゲヌス(オーロックス)、恐竜並みに凶暴な飛べない巨鳥フォルスラコス(恐鳥)等々、特に巨大さを誇る絶滅動物が選ばれているようです。
 作中におけるこれら生物の描写はあまり正確だとは言い難いのですけど(翼竜が人間を掴んで飛んだり、ステゴサウルスが背中の板を使って滑空したり(^^;))、それでも現代では滅んでしまった様々な生き物が躍動的に描かれています。そこが〈ペルシダー・シリーズ〉の魅力の一つでしょう。
 但し、肉食獣は言うに及ばず、草食動物ですらその巨大さ故に非常に危険なもの揃いです。本シリーズの主人公達(原住民のタナーを除く)は皆あっさりとペルシダーに順応してしまいますが、実際のところ現代人が生き延びるのは難しそうですね。

 さて、本作でも非人類のヒューマノイドが二種登場しています。
 一つは牛人族ガナク("Ganaks")です。頭に角が生えた二足歩行の反芻動物で、文字通り牛に似た種族ですね。しかしながら、二巻登場の獣人(羊に似た種族)とは異なり、非常に凶暴です。知能はあまり高くないのですが力は強く、人間を捕らえては奴隷として使役し、娯楽のためにそれを殺す、かなり悪辣な連中のようです。
 一方、ゴルブス族("Gorbuses")はほぼ人間と同じ姿をしていますが、白髪・赤目のアルビノで、犬歯が発達した食人種です(こちらも凶悪(^^;))。このゴルブス族、ペルシダーの他種族とは異なり「前世の記憶」という少々オカルト的味付けがなされているのが特徴ですね。彼らの前世はどうやら実在の人物らしい点が興味深いです。

 『戦乱のペルシダー』から始まった、デヴィッド救出作戦絡みのエピソードは本巻で終了です。
 次巻では再びデヴィッドへと視点を戻したお話になります。

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