ニムロデ狩り

[題名]:ニムロデ狩り
[作者]:チャールズ・シェフィールド


 本書は人間と異星人の関わりを描く、太陽系近隣の宇宙を舞台としたSF小説です。
 このお話の特徴は、とにかくたくさんの要素が詰め込まれていることですね。SFとしての核は異星人との交流にあると思われますが、それに加えて三組の男女による愛憎劇、様々なガジェットが複雑に絡み合ったり合わなかったりします(^^;) ある意味びっくり箱的な、先の読めない楽しさが感じられる物語です。
 四つの知的生命体を内包しながら拡大を続ける人類の既知領域。いつか訪れるかもしれない外敵に対抗するため生み出された人工生物は、しかし開発者を殺害して逃亡を図ります。それら十七体のモーガン構造体を倒すため、それぞれの知性体から抜擢された四人ずつのチームが編成されるのですが……。

 物語は今から千年あまり後の時代から始まります。
 探査船による既知領域拡大の結果、人類は太陽系近隣の星域にて三つの知的生命体を発見していました。それぞれパイプ=リラ、ティンカー、エンジェルと呼ばれる異星人は、地球人とともにステラー・グループという連合体を形成しています。
 しかし、地球人の探索意欲は留まることを知らず、今なお無人探査船は領域拡大を続けていました。一部の人々は、やがて危険な存在と遭遇することになるのではないかと危惧を抱き、これに対抗するためリヴィア・モーガン構造体を創造することにします。
 モーガン構造体は半機械・半生命の人工物で、強大な力と高い知能を持ち、ステラー・グループの守護者となるはずでした。けれども、何かの手違いによりモーガン構造体は開発に当たっていた人間を殺害し、宇宙ステーションを破壊して何処かへと逃亡してしまったのです。
 事態を重く見たステラー・グループの代表者達は、開発の責任者エスロ・モンドリアンと太陽系保安隊指揮官リューサー・ブレイチスに対し、モーガン構造体を捜索し破壊すること命じます。モーガン構造体の開発は地球人の独断であったため、知性体それぞれから選ばれた四人で一つのチームを結成し、任務に当たらせるよう定めたのです。
 モンドリアンは大使達の定めた条件をクリアするために、マッド・ワールドと呼ばれて蔑まれる地球へ赴き、身体的に優れたチャンセラー・ドルトン(チャン)とリア・レインボウの二人を選び出します。ところが計算違いなことに、チャンは知能に障碍を持ち、二歳児ほどの知性しか持たなかったのです。

 本書の注目ガジェットは、ステラー・グループを形成する異星人達ですね。
 パイプ=リラは人類が最初に遭遇した知的生命体で、大きな管状の体を持つ節足動物に似た生物です。誠実で穏やかな性質ですが、独創性に欠けると(地球人には)考えられているようです。
 ティンカーは翼を持つ小さな生物が集まって形成される集合知性体で、陽気ですが少々散漫です。集合体を形成する個体の数が増えれば増える程知能が高まりますが、逆に反応速度が遅くなるという側面があります。
 エンジェルはステラー・グループの新参者です。植物であるチャッセルローズの球根内に知性を持つ結晶体シンガーが共生しており、動作は緩慢ですが最も高い知能を持つとされています。何故か地球のことわざが好きなようで、会話中に頻繁に引用します(^^;)
 と、以上のように多様な異星人達なのですが、実のところ最も異質的に扱われるのは他ならぬ地球人かもしれません。上記三種族はいずれも平和的で争いを好まないのに対し、人類だけは暴力志向の強い点が強調されます。
 このステラー・グループ四人からなるモーガン構造体追跡チームでは、各々の種族の特徴がコミカルに描かれ、なかなか楽しめます。

 あらすじだけを読まれると、本作の中心ストーリーがモーガン構造体の探索と破壊という部分にあるものと感じられてしまうかもしれませんが、実はそうでもなかったりします。
 複数の人間による陰謀劇・愛憎劇・復讐劇に加えて、チャンの知性を向上させるトルコフ刺激装置、ニードラーと人工生物、危険かつ滑稽な狩猟ゲーム・アデスティス、気のいい異星人とのコミュニケーション、そして『ニムロデ』。数限りない要素がごった煮となって綴られ、中には回収されない伏線もあるようです(^^;)
 もっとも、これは決して悪い意味ではありません。様々な展開が絡み合うストーリーは、それ故に飽きさせない面白さを持ち、驚きの真相へと繋がります。少しばかり詰め込み気味で駆け足になっている部分もなきにしはあらずですが、高い娯楽性が期待できる物語です。

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