こちら異星人対策局

[題名]:こちら異星人対策局
[作者]:ゴードン・R・ディクスン


 本書は異星人文化とのカルチャーギャップをコミカルに描いた、スラップスティックSFです。邦題には「異星人対策局」とあるものの、物語は主人公の若夫婦・トム&ルーシーの受難の日々が描かれます。
 原題は"The Magnificent Wilf"、『素晴らしきウィルフ』といった辺りですが、これは奥さんのルーシーを指している言葉ですね。ある経緯からルーシーはウィルフ(英俗語で「馬鹿」の意味。作中ではそういう名称の地球人女性に似た異星人がいるとされる)呼ばわりされてしまうのですけど、本人は憤懣やるかたない様子です(^^;)

 地球が銀河に無数に存在する異星人の文明とファースト・コンタクトを果たしてから、それほど時間の経過していない時代の話です。
 〈異星人対策局〉で三等事務官補を務めるトム・ペアレントは、ある日局長のドマンゴ・アクシーシから呼び出しを受けます。トムがオフィスへ赴くと、ドマンゴ局長はその理由を説明しました。
 地球のある宙区でも特に有力な種族・オプリンキア人の学者ミスター・レジラが、「ペットを飼っている地球人夫婦の日常生活を体験したい」と希望していると言うのです。ミスター・レジラは超重要人物で、対策局外の人間と接触させる訳には行きません。そこで、夫婦仲が良く、トム本人が誰からも好かれる性格であること、妻のルーシーが優秀な女性であること、そして愛犬レックスを可愛がっていること等を理由として、トムとルーシーがミスター・レジラの受け入れ先に大抜擢されたのでした。
 やがて二人は黒い毛むくじゃらの異星人であるミスター・レジラを家へ迎え、もてなすことになります。ところがその翌朝、それまでごく普通の犬だったレックスが、いきなりテレパシーを使って喋り始めたのです。不測の事態に慌てるトムとルーシーですが……。

 本書の注目ガジェットは、シャーク人です。
 シャーク人とは、その名の通り軟骨魚のサメに似た異星人です。但し、シャーク人の出身惑星は一つではありません。文字通り、各惑星で並行進化したサメ型知的生物の総称とされています。地球の海に棲息するサメも、原始的なシャーク人と分類されているようです(笑)
 一般的にはホオジロザメに手足を生やしたような体型で、元は海中生物ですが陸上で生活可能な種族もいます。各々別個に進化した生物ですから遺伝子的には無関係なのですが、全てのシャーク人は同傾向の性質を持ちます。非常に攻撃的で、仲間と敵とを問わず手当り次第に襲いかかり、我欲を制御できないといった具合です。現実のサメは肉食魚ではあるものの、そこまで凶暴ではないような気もしますが(^^;)
 互いに関係のない異星人を「サメっぽい」という枠で一括りにしてしまうのは乱暴ですけど、考えてみるとスペースオペラにしばしば登場する人間型異星人の扱いに近いようにも思われます。シャーク人はもしかしたら、そうしたスペースオペラ的ご都合主義に対するパロディなのかもしれませんね。

 ミスター・レジラの件を乗り切った後、トムは一等事務官に昇進することになり、更にその後の経緯からペアレント夫妻と犬のレックスは地球を代表する無任所大使として銀河世界へ旅立つことになります。大変な出世ではあるのですが、摩訶不思議な異星人達を相手に次々とトラブルに巻き込まれ、二人には息をつく暇もありません。
 もっとも、どこかしら笑いを誘うエピソードばかりですし、主人大好きなレックスの言動が可愛らしいこともあり、暗い印象はないですね。肩の力を抜いて楽しめる、愉快なコメディ作品です。

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