小惑星要塞を粉砕せよ!

[題名]:小惑星要塞を粉砕せよ!
[作者]:マンリー・ウェイド・ウェルマン


※このレビューには前巻までのネタバレがあります。ご注意ください。

 宇宙冒険活劇〈キャプテン・フューチャー・シリーズ〉の二十作目です。
 本巻は、シリーズを構成する長編の中では最後の作品に当たります。また、作者もメインのエドモンド・ハミルトン氏ではなく、マンリー・ウェイド・ウェルマン氏です。
 シリーズの締めくくりとしてキャプテン・フューチャーの前に立ちはだかるのは――彼の最大のライバル、〈火星の魔術師〉ウル・クォルン。

 数々の功績を讃えて、太陽系功労章を授与されることとなったフューチャーメンですが、カーティス達にとってそんな儀式は煩わしいものでした。一行の中で唯一表彰に乗り気なグラッグを月に残し、残りの三人は調査と称して小惑星697へと出かけてしまいます。
 小惑星697は小さいながらも自然豊かな星で、カーティスとサイモン、オットーはひとときの平穏を楽しんでいました。そこへ、彼らを追って女性諜報員ジョオンが姿を現します。
 隠れ家を突き止められてしまったカーティスはジョオンを歓迎しようとしますが、彼女は遊びにきたのではありませんでした。地球の衛星である月が、突如として消滅してしまったという大事件を彼等へ伝えにきたのです。
 太古の昔から地球の伴侶であった月は、何の痕跡も残さず姿を消していました――月面にいたグラッグと共に。しかしカーティスは、月が存在しなくなったのではなく、別の次元へ移動してしまっただけらしいことを突き止めます。更に、それは何者かが意図的に行ったことなのだと彼は推測しました。
 カーティスとサイモンは、〈コメット〉の救命艇へ次元転換装置を装備すると、次元の狭間に隠された月を目指します。そこには月とX空間の天体がパッチワーク状に入り交じった形で存在していました。
 そして、それを目論んだ人物こそ、死んだと思われていたカーティスの仇敵、ウル・クォルンだったのです。

 本書の注目ガジェットは、X空間です。
 〈キャプテン・フューチャー・シリーズ〉には、いわゆる異次元空間に分類される別世界がいくつか登場します。『透明惑星危機一髪!』/『彗星王の陰謀』/『異次元侵攻軍迫る!』といった辺りですね。
 それらがどう違うのか良く分からない上に、一部の作品でサイモンが「第四の次元は時間だ」と異次元空間の存在を否定する発言を行っているのは困りものです。もっとも、元々あまり科学考証に留意を払っていないスペースオペラですし、各話における設定の不整合も少なくありませんから、気にしないのが吉なのでしょう(^^;)
 本作におけるX空間は、キャプテン・フューチャーの宇宙とは別の、良く似た世界です。そこにはやはり太陽とそれを周回する惑星があって、その上には太陽系人そっくりの人間が住んでいます。但し太陽は死滅しかけており、これに対処するため彼等の支配者である上帝は太陽系侵略を目論んでいます。
 この、「寿命が尽きかけた世界」というシチュエーションも、〈キャプテン・フューチャー・シリーズ〉に頻繁に登場しています。その意味でも、本作は集大成的エピソードだと言えるかもしれません。

 長編ではシリーズ中最後の巻に当たる『小惑星要塞を粉砕せよ!』ですけれども、個人的にやや不満に感じる部分がいくつかあります。
 中でも気になるのは登場人物の振る舞いで、各キャラクタの行動パターンが他の作品と微妙に異なる印象があります。特にキャプテン・フューチャー最大のライバルたるウル・クォルンがあまり活躍しないのは残念ですね。クォルン先生には、もっと無駄に自信満々な態度でいて欲しいものです。:-)
 また、翻訳者・野田昌宏氏の指摘にもあるように、本作には第十作『月世界の無法者』で死亡したはずの太陽系政府主席ジェイムズ・カシューが登場しています。長編の刊行が時系列順であるなら、これは明らかな設定ミスです。もっとも、設定的には第七作『透明惑星危機一髪!』より後の作品とリンクしている部分はなさそうですから、第八作『時のロスト・ワールド』の前後に位置するエピソードと考えられなくもなさそうですが。

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