フューチャーメン暗殺計画

[題名]:フューチャーメン暗殺計画
[作者]:ジョゼフ・サマクスン


※このレビューには前巻までのネタバレがあります。ご注意ください。

 宇宙冒険活劇〈キャプテン・フューチャー・シリーズ〉の十七作目です。『異次元侵攻軍迫る!』と同じく、メイン作家のエドモンド・ハミルトン氏ではなくジョゼフ・サマクスン氏が書かれたお話です。
 本作では「キャプテン・フューチャーではないカーティス・ニュートン」が描かれる部分が白眉ですね。もしカーティスがヒーローになる道を選ばなかったらどんな人間になっていたのか、サマクスン氏独自の解釈を交えつつもシリーズの世界観を崩すことなく親和性の高いエピソードに仕上げているのは見事です。

 太陽系は深刻な人口過剰問題に直面していました。太陽系外惑星への植民も始まりつつありますが、過剰人口全てを受け入れるには到底足りません。
 超過密状態に喘ぐそれらの人々を救うため、惑星総督議会にてカーティス・ニュートンが提案したのは、人工惑星の建設でした。火星と地球の公転軌道の間に新しい惑星を人工的に作り出し、そこを居住地としようと言うのです。
 この議案は大きな拍手をもって受け入れられました。けれども、表向きは賛意を示しながらも、内心は激しい怒りを秘めた者もいたのです。
 大資本家ハートリー・ブルックスは世界中の経済活動を牛耳り、後少しで実質的に太陽系諸惑星の専制君主となるところでした。しかし、カーティスの提唱した人工惑星建設が実行されたら、その野望は打ち砕かれてしまいます。ブルックスはこれを阻止する為に、キャプテン・フューチャーとその仲間達を暗殺することを決意します。
 そうとは知らぬフューチャーメンが小惑星バルドウルへ遺跡調査の為に降り立ったとき、罠は発動しました。大爆発に彼等が巻き込まれたことを遠くから確認したブルックスの手下は、英雄キャプテン・フューチャーの暗殺に成功したのだと舌なめずりし、その死を確認もせずに立ち去ります。
 しかし、カーティスは生きていました。顔に大きな傷が二つ刻まれ、吹き上がったガスに有名な赤い髪を黒く染められ、すっかり容貌が変化してしまいながらも。
 そして更に、爆発のショックで彼は記憶を失っていたのです。

 本書の注目ガジェットは、人工惑星フューチュリア("Futuria")です。
 本作内ではまだ建設中のためか名前は登場しませんけれども、最終的にキャプテン・フューチャーの栄誉を称えてこう命名されるようです。
 フューチュリアは高密度の小惑星ソーを核として形成され、地球より小型ではあるものの居住可能面積の広さは地球以上とされています。軌道半径の平均はおよそ一・七天文単位と、約一・五天文単位の火星よりも外側に位置するようですが、楕円軌道と設定されていますので一部火星軌道の内側に入り込むのでしょう。
 フューチュリアはそれ自体が超大型宇宙船として機能し、加速・減速の手段を有するようです。また、重力遮断壁を備え、地球や火星の運行に影響を与えないと記されています。フューチュリアの具体的なサイズや質量は不明(表面積から推定すると火星よりは大きいはず)ですが、無茶設定にも程があると突っ込みを入れたくなります(笑)

 記憶を失った我等がカーティス君は他のフューチャーメンとはぐれ、近くを通りがかった海賊船に拾われて〈黒ひげ〉と名乗ることになります。
 〈黒ひげ〉は太陽系最大の英雄キャプテン・フューチャーの存在を覚えているものの、自分がそのカーティス・ニュートンであることは思い出せないようです。プライベートに関する記憶のみがが消失している状態なのでしょうか。
 彼はカーティスと同一人物ですから、正義を愛し悪を憎む心は変わっていません。科学知識に関する記憶も健在で、相変わらずの天才ぶりを発揮します。
 ただ、自分が正義の味方であるという束縛から解放されたためか、若干法律を遵守する気持ちは薄れています(元からかも(^^;))。また、性格的にも少々ワイルドな印象で、彼がカーティスだと知らないジョオンには惹かれる部分があったようです。
 カーティス・ニュートンは成人した日、正義の味方として悪と戦うか、普通の人間として生きていくかの選択をサイモンから与えられました。カーティスはヒーローとなることを選びましたが、もし彼がもう一つの選択肢を選んでいたらどういう人物になったのか――サマクスン氏による解釈ですが、本書ではその姿が描かれているように感じられますね。
 高度な知性と大きな行動力を持ち、倫理観は高いものの少々独善的な〈黒ひげ〉は、かなりのトラブルメーカーです(悪人にとっては特に)。彼自身に悪意はありませんが、好むと好まざるとに拘らず事件に巻き込まれることとなり、惑星パトロールから見ると要注意人物と言えるでしょう。
 キャプテン・フューチャーへ至る道を選ばなかったとしても、カーティスが平穏な人生を送ることは難しかったかもしれません。

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