魔法の月の血闘

[題名]:魔法の月の血闘
[作者]:エドモンド・ハミルトン


※このレビューには前巻までのネタバレがあります。ご注意ください。

 宇宙冒険活劇〈キャプテン・フューチャー・シリーズ〉の十六作目です。
 この巻はストーリー内容から、ややコメディ要素の強い作品です。何しろ、「本物のフューチャーメン」が「偽物のフューチャーメン」に成り済ますお話ですから(^^;)
 また、基本的に各話の物語が独立しているため、どの巻から読んでもあまり違和感のない〈キャプテン・フューチャー・シリーズ〉ですけど、本書は第二作『暗黒星大接近!』と密接に関連しており、更に第一作『恐怖の宇宙帝王』のエピソードへの言及もあります。お話のバックボーンと結びついていますから、できればこれら二作を事前に読んでおくことをお勧めします。

「キャプテン・フューチャーヘ緊急呼び出し!」
 他の恒星での調査を終えて太陽系に帰還したキャプテン・フューチャーことカーティス・ニュートン。彼がテレオーディオ(ラジオの親戚?)のスイッチをひねったとき、唐突にこんな言葉がスピーカーから飛び出してきました。
 一体何事かと聞き入るフューチャーメンでしたが、それは彼等に向けたメッセージではありませんでした。偉大なヒーローであるキャプテン・フューチャーを題材としたテレピクチュア(テレビの親戚?)映画の製作が決まり、主演のキャプテン・フューチャー役の俳優を募集する案内だったのです。
 ところが、この件には裏がありました。冥王星の衛星ステュクスで発見されたダイヤモンド鉱床を巡り、悪名高い企業家ジョン・ヴァルデーンが何やら動きを見せていたのです。映画のロケ地にはステュクスが含まれており、そして製作に当たる〈テレピクチュア〉社はヴァルデーンの支配下にあります。
 太陽系主席ダニエル・クルー(ジェイムズ・カシューの後任者)に依頼を受けたカーティスは、ここで大胆な作戦に出ます。見た目は立派なものの気弱で演技力のない青年チャン・カースンに扮し、自分自身の役を演ずる俳優に応募して選ばれたのです。そして、他のフューチャーメンもロケ隊の中に潜り込みました。
 伝記映画の撮影をこなしつつ、そこに隠された意図を探ろうとするキャプテン・フューチャー達。果たして、ヴァルデーンは何を目論んでいるのでしょうか。

 本書の注目ガジェットは、〈破壊者〉("The Destroyer")です。
 ステュクスは冥王星の第三衛星で、その住人であるステュクス人は幻像の扱いに長けています。(彼等も太陽系の他の住人同様、デネブ文明の子孫です)
 ステュクス人は機械文明を忌み嫌い姿を隠していたのですが、『暗黒星大接近!』のエピソードでその存在が公になって以降は鎖国を解いた状態になっています。しかし、集まってきた人々とのいざこざにかなり不満を募らせており(あらすじ中にあるダイヤモンド鉱床へのアプローチは完全に拒絶)、再びステュクスから外世界人を追い払う為に持ち出されたのが、古代から伝えられる英知〈破壊者〉です。
 ネタバレを避けるため〈破壊者〉がどのような性質のものかは伏せさせて頂きますが、カーティスがその威力を認める通り相当なものですね。ステュクス人にとっては脅威にならないものの、機械文明を瓦解させてしまいかねない力を秘めています。また、フューチャーメンのうちサイモンとグラッグに対しては、直接命に関る危険な存在です。
 ただ、この〈破壊者〉が本当にステュクス人にとって無害なのかは少し疑問の残るところです。何しろ、ザロ博士の事件で描写されたステュクス人側の装置には、〈破壊者〉が破壊の対象とするはずのものが含まれていますので(笑)

 撮影されるテレピクチュア映画『大宇宙のエース』は、『暗黒星大接近!』でのキャプテン・フューチャーとザロ博士の対決を題材としたものですが、何故か木星の〈大火炎海〉(『恐怖の宇宙帝王』に登場)を舞台とするシーンが撮影されることになります。ドラマチックな演出のためということですが、そのいい加減さにジョオンは不満たらたらのようです(^^;)
 作中にザロ博士を始めとする敵方の役者達が登場しない等、映画撮影そのものの描写が足りないのは少し残念なところですね。この辺りをしっかり再現してくれれば、面白い自己パロディになったのではないかと感じるのですけど。:-)

この記事へのコメント

  • X^2

    この話がここまで最後の方だったのを、これまでは認識していませんでしたが、確かに過去のネタが、上に書かれている他にも海王星の深海魚人とか、色々登場していますね。またジョオンの「彼は私のものよ!」的振る舞いも、これまでの経緯があってのものでしょうし。
    スティックスでの「破壊者」一掃装置の組み立てで、蔓を炭化して導線にという部分では、「宇宙囚人船」を連想しました。
    ところで上で触れた深海魚人もやっぱりデネブ人の子孫なんでしょうか。その場合、例の「人工進化」による結果なんですかね。
    2009年03月21日 15:41
  • Manuke

    いきなり「宇宙船建造」とか言い出すより、よほど説得力がありますよね(^^;)
    確か『宇宙大作戦』に、豊富にあるダイヤモンドを使って黒色(?)火薬を作るエピソードがあったと思いますが、知識を活用して原始的な材料から何かを作り出すというネタは好きですー。

    水棲人とデネブの関連は作中に記述がないようですが、顔が人間そっくりとのことですから、おそらく子孫なのでしょう。
    そうすると、海王星には浅瀬向けの人種と深海向けの人種の二種族が移住したということなんでしょうか。
    2009年03月22日 00:49

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