人工進化の秘密!

[題名]:人工進化の秘密!
[作者]:エドモンド・ハミルトン


※このレビューには前巻までのネタバレがあります。ご注意ください。

 宇宙冒険活劇〈キャプテン・フューチャー・シリーズ〉の十五作目です。
 これまでのお話の中で明かされた重要な世界設定として、古代デネブ人があります。宇宙のそこここに存在する人間型種族は、全て古代デネブ人をその祖とするという設定ですね。
 本巻ではいよいよ、そのデネブ人の秘密へと迫ることになります。遥かな太古の時代、数々の恒星系へ移民を行った古代デネブ文明の栄光と闇が解き明かされるわけです。
 また、今回の物語はスペースオペラでありながらも単なる科学礼賛ではなく、生命工学に対する警鐘という側面も読み取ることができるのは興味深いところです。

 天王星の衛星チタニアでは、キャプテン・フューチャーを含む考古・科学探検隊により遺跡の調査が行われていました。
 チタニアはジャングルに覆われた未開の衛星でしたが、ここには太陽系最大規模の、かつてデネブ人が移民を行った時代の古代遺跡が残されていたのです。遺跡を聖なるものとあがめる原住民をなだめつつ、彼等は研究を続けていました。
 そのうちの一つ、石板に書かれた碑文を解読したカーティスは、そこに人工進化の秘密を隠した〈生命の洞〉のありかが記されていることを発見します。しかし彼は、その技術が危険だとし、プロトン・ピストルで碑文を破壊してしまいました。
 これに憤ったのが生物学者フィリップ・ウインタース博士です。ウインタースは知識が失われたことに関して、キャプテン・フューチャーの傲慢に腹を立てました。物理学者コール・ノートンはそんなウインタースに対し、宇宙艇〈コメット〉を奪って直接デネブへ行こうとそそのかします。
 ウインタースが持つのは純粋に学術的な好奇心でしたが、ノートンは人工進化の秘密から利益を得ることを目論んでいたのです。ウインタースとノートン、そしてノートンの手下達は、碑文の内容を知るジョオン・ランドールを誘拐し、フューチャーメンの隙をついて〈コメット〉を乗り逃げしてしまいます。
 カーティスは悔しさに臍を噛むものの、光よりも速く飛ぶ〈振動ドライブ〉が装備されているのは〈コメット〉のみです。一行は月に戻って予備の〈振動ドライブ〉を別の宇宙船へ搭載することにします。
 人工進化の秘密を暴かせないため、そして愛するジョオンを取り戻すため、キャプテン・フューチャーは急ごしらえの船を駆ってデネブを目指すのですが……。

 本書の注目ガジェットは、人工進化です。
 デネブの惑星アアルに到着したフューチャーメンとエズラ・ガーニーは、そこで一部が人間・一部が動物の奇妙なキメラ、獣人と出会うことになります。獣人には人間馬〈鼻息高きものたち〉、虎の姿をした〈虎たち〉、人間禿鷹の〈翼あるものたち〉と、いくつかの種族が存在します。
 どの種族も頭部はおおよそ人間と同じ形をしており、知能も人間と変わりありません。また、獣人の間には特に諍いもなく、平和に共存しているようです。
 これら獣人の祖先は人間ですが、デネブ超科学の産物である人工進化により遺伝子パターンに手を加えられ、人為的に生み出されたものです。古代デネブ人の中にいた邪悪な者が、家畜としての使役や護衛、狩りのために人間そのものを改造することを思いついたというわけですね。
 惑星アアルには彼等の他、人工進化を悪用した邪悪な人間の子孫も暮らしていますが、こちらは獣人と対立しています。原始的生活を送りながらもその性格は残虐で、獣人達からは〈人間もどき〉と呼ばれ軽蔑されています。

 これまでのエピソード中でも、キャプテン・フューチャーが新たに発明・発見したものを公表せず秘匿する場面はいくつかありましたが、今回はそれが火種となってトラブルへと進展してしまいます。
 最終的にはウインタース博士もカーティスの行動を是認することになりますけど、科学と倫理の境界線を引く部分であり、万人を納得させることは困難です。本作ではノートンを悪者にしてその行動を悪だと片付けてしまうものの、ウインタースが当初言っていた人工進化の人類への貢献もあながち間違いとは言い切れません。どうもカーティス君、独断専行のきらいがありますね(^^;)

この記事へのコメント

  • X^2

    この世界では九惑星だけでなく、月や小惑星にも原住民が住んでいるようですが、チタニアにも居たんですね。もしやほとんどすべての天体に大気が有って原住民が居るという設定なんでしょうか。
    このシリーズの未来技術は荒唐無稽少なくとも近未来では不可能というものも多いのですが、「人工進化」は現実世界でも今世紀中に実現してしまうかもしれません。それが良いかどうかは別問題ですが。
    2009年03月14日 17:06
  • Manuke

    チタニアより大きいはずの地球の月には、何故か大気がないんですよねー。
    空気が有り余っているのだとすれば、苦労して〈物質生成の場〉まで調べに行く必要がなさそうな……というのは禁句?(^^;)

    人間の遺伝子操作に関しては、いずれは現実のものになるのでしょうね。
    倫理基準は人の数だけあるでしょうけど、生まれてくる子供が苦しむことにはなって欲しくないものです。
    2009年03月15日 00:17

この記事へのトラックバック