異次元侵攻軍迫る!

[題名]:異次元侵攻軍迫る!
[作者]:ジョゼフ・サマクスン


※このレビューには前巻までのネタバレがあります。ご注意ください。

 宇宙冒険活劇〈キャプテン・フューチャー・シリーズ〉の十四作目です。本作はこれまでの巻とは異なり、作者がジョゼフ・サマクスン氏となっています。
 二十世紀前半のアメリカではパルプ誌(質の悪い紙で作られ、あまり高尚とは言いがたいフィクションを掲載した雑誌(^^;))が人気を博しました。ここに掲載されたヒーロー小説がパルプ・ヒーローものと呼ばれる作品群で、多くの場合一つのシリーズを複数の作家さんが執筆していたそうです。出版社側が主導権を握っていた訳ですね。
 キャプテン・フューチャーもまたそうしたパルプ・ヒーローに属する訳ですけど、本シリーズはパルプ・ヒーローものの中では例外的にエドモンド・ハミルトン氏がそのほとんどを執筆されています。長編二十作中十七作、そして短編七作全てがハミルトン氏によるもので、設定に関しても氏の意向が強く反映されているとのこと。
 この『異次元侵攻軍迫る!』はサマクスン氏の担当された巻ですが、ハミルトン氏の設定や雰囲気に沿う形で書かれており、他の巻と比較してもほとんど違和感がありません。また、『輝く星々のかなたへ!』のゲストキャラクタが再登場するなど、シリーズものならではの醍醐味も盛り込まれているのがファンにとって嬉しい部分です。

 遥か星々の彼方、射手座星系・ヴェガ・アンタレスといった太陽系外の世界では恐るべき事態が進行しつつありました。ゴーマ・ハスを名乗る正体不明の支配者に指揮された強大な侵略軍が、あちこちの星系に破壊をもたらしていたのです。
 侵略者達は人間と怪物スヴァードからなる混成軍でした。スヴァードは身長三メートルもの大型生物で、こちらからの攻撃は幽霊のように貫通してしまうのに、向こうからの攻撃は殺傷力を持つという厄介な相手です。その猛攻の前に防衛側は劣勢に立たされてしまいます。
 ここで、かつて〈物質生成の場〉の秘密を銀河中心から持ち帰ったホル・ジョル達は、そのとき彼等を助けてくれた地球人キャプテン・フューチャーのことを思い出しました(『輝く星々のかなたへ!』参照)。彼ならばきっとこの苦境をなんとかしてくれるに違いないと、その救援を求めることにしたのです。
 太陽系へ辿り着いた彼等と再会したフューチャーメンは、その求めに応じてアンタレス星系へと向かうことになりました。ところがその道中、宇宙艇〈コメット〉の不調を修理するため船外へ出ていたカーティスは、あるトラブルにより船から振り落とされ、宇宙の迷子となってしまいます。
 無限に広がる宇宙空間で、行方不明になったカーティスを発見するのはまず不可能です。サイモンら三人は絶望しつつも、ホル・ジョル達の依頼を果たす為に〈コメット〉の進路をアンタレスへと向けます。
 一方そのころ、カーティスは未開の惑星へと辿り着いていました。その惑星上には人間が住んでいたものの、彼等は科学技術を持っていません。他のフューチャーメンと合流する為に、カーティスは囚人船遭難事件(前巻参照)のとき同様、しかし今回はたった一人で宇宙船建造を目指すのですが……。

 本書の注目ガジェットは、精神交換です。
 アンタレスへ出発する前、サイモンは無限の距離をテレパシー交信可能な金属水晶を発明しています。遭難したカーティスはこれを使って地球のジョオンと連絡を取り、原住民の娘とジョオンの精神を入れ替えることにします。
 原理の説明は例のごとくほとんどありませんが(^^;)、金属水晶の他に月面の地下実験室にある静電発振装置というものも使用しています。仕組みはともかくとして、金属水晶を身に付けた二人の人間の心を交換してしまう訳ですね。この交換によってカーティスは気心の知れたジョオンという助手を手に入れ、惑星脱出の準備を進めることになります。
 ジョオンと精神を交換する相手は、青い肌をした原住民の娘ヴァルラです。カーティスは彼女に「他の星へ行ってみたい――って夢見たことはないか?」と誘いを持ちかけ、ジョオンの精神をこちらへ招く代わりに、ヴァルラの精神を太陽系へ送ります。なんだか知識のない相手を騙しているような気がしなくもないですけど、向こう側にはエズラ・ガーニーがいますから、彼がヴァルラをもてなしてくれたのでしょう。そちらのエピソードが描写されていないのは少々残念です。

 侵略軍を率いる謎の存在ゴーマ・ハス(タイトルでバレバレですが(笑))には変わった特性があります。見る者によってその姿が異なり、自分と同じ人種としてその目に映るというものです。ヴェガ人が見るとヴェガ人に、地球人カーティスが見ると地球人に、という感じです。
 面白いのは、異形のフューチャーメンにとってもそうだという点です。すなわち、グラッグからは金属製ロボットに、オットーからはアンドロイドに見えるわけです。そして更には、サイモンからは透明の金属ケースに収められた〈生きている脳〉に見えるのが肝です。
 この奇妙な特性は、ゴーマ・ハスが自分の存在を被征服者に受け入れさせるためのものですが、サイモンの反応は非常に興味深いところですね。何故なら、今でこそサイモンは脳だけの存在ですけれども、彼は本来地球人なのですから。そのサイモンの目にゴーマ・ハスが地球人の姿ではなく〈生きている脳〉と映ったということは、サイモンは過去の人間時代ではなく〈生きている脳〉という状態の方を自分本来の姿だと認識しているということなのでしょうか。

この記事へのコメント

  • X^2

    この話も記憶が相当にあいまいで、「カーティスが未開の惑星に漂着」や、「ゴーマ・ハスが見る者と同じ姿に見える」といった部分は全然覚えていなかったです。征服を容易にするためなら、「同じ姿」より「各種族の神の姿」の方が良い気がします。
    ところで「精神交換」のアイディアは「スターキング」のそれですね。作家が同じだから、と言いたいところですが、よく考えてみるとこの話はハミルトン作ではありませんでした。
    2009年03月07日 15:04
  • Manuke

    「同じ人種」というのは微妙なところですよね。
    「神の姿」は面白いですけど、身近な者同士で違う姿に見えてしまうとトラブルの元になりそうです。人によっては蛸顔の邪神に見えたりとか。:-)

    近場での精神交換なら、『挑戦! 嵐の海底都市』にもありました。
    ヴァルラの立場からすると、シチュエーションは確かに『スター・キング』に近いかも。恋をしても、自分の体ではないという苦悩が生じそうですし。
    2009年03月08日 00:06

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