宇宙囚人船の反乱

[題名]:宇宙囚人船の反乱
[作者]:エドモンド・ハミルトン


※このレビューには前巻までのネタバレがあります。ご注意ください。

 宇宙冒険活劇〈キャプテン・フューチャー・シリーズ〉の十三作目です。
 本作はシリーズ中やや異色のエピソードで、他の作品に見られるような事件解決や敵との対決ではなく、ある困難な状況からの脱出劇がメインとなります。手に汗を握ってしまうような問題が次から次へと発生する展開で、ファンからの評価が高いのも頷けるところです。

 惑星警察機構の囚人護送船〈ヴァルカン〉は、海賊・殺し屋・詐欺師といった凶悪犯を乗せ、地球から冥王星の衛星ケルベロスへ出発しようとしていました。
 警備のためエズラ・ガーニーとジョオン・ランドールが〈ヴァルカン〉へ乗り込み、ケルベロスの太陽系刑務所へと向かう手筈でした。けれども、カーティス・ニュートンは何か嫌な予感に襲われ、フューチャーメンを連れて〈ヴァルカン〉へ同乗することにします。
 エズラはカーティスの心配を杞憂だと笑っていましたが、しかしそうではなかったのです。囚人達は看守の思いも寄らぬ方法で反乱を起こし、〈ヴァルカン〉を乗っ取ってしまいました。操縦士達は殺され、キャプテン・フューチャーらも囚われの身となります。
 そのまま〈ヴァルカン〉をアルファ・ケンタウリまで乗り逃げしようとした囚人達でしたが、その途中で宇宙船の操縦を誤り、小惑星に遭難する羽目に陥りました。墜落後、船から逃げ出した者達の目の前で、〈ヴァルカン〉は溶岩の海に沈んでいきます。
 太陽系から四億マイル(大した距離じゃないような……(笑))も離れた謎の小惑星に島流し、しかも小惑星は二ヶ月以内に木っ端みじんに砕け散ってしまうことが判明します。助かる方法はただ一つ――全員が協力し、宇宙船を建造して脱出すること、です。
 キャプテン・フューチャー達は本当に宇宙船を作ることができるのでしょうか。そして、小惑星に秘められた謎とは……。

 本書の注目ガジェットは、ゼロからの宇宙船建造です(^^;)
 いくらなんでも宇宙を飛ぶための船を道具すらない状態から二ヶ月で作れる訳がない、と突っ込みたくなりますが、そこは堪えておきましょう。太陽系最高級の天才が二人もいるのですから。:-)
 作中ではまず、動物の皮で作ったふいご、岩で組んだ炉を使って鋼鉄を精錬するところから取りかかります。精錬された鋼鉄からハンマーやツルハシといった道具を作り上げ、それを使って更に効率の良い精錬炉を建造する、といったブートストラップ的な手順を踏み、最終的には宇宙船本体やサイクロトロンの作成を目指す訳です。
 さすがに精密な工作は不可能なので、計測機器類は用意できないようです。原子力を扱う作業を勘で行うのはどうなんだろうと思わないでもないですが、逆に本シリーズに登場するサイクロトロンは、大雑把な作りでも安定して稼働させることができる程の偉大な発明なのだ、と解釈できるかもしれません。

 〈キャプテン・フューチャー・シリーズ〉に登場する重要なキャラクタとして、エズラ・ガーニーに触れておきましょう。
 エズラ・ガーニーは惑星パトロール指令で、キャプテン・フューチャーの良き理解者です。年齢は明記されていませんが、六十歳前後でしょうか。カーティスの亡父ロジャー・ニュートンと同じぐらいか、やや上の世代だと思われます。
 エズラは現場叩き上げのパトロール員で、若い頃には宇宙海賊と丁々発止のやりとりをしていたようです。現在は指令の座に収まっていますが、これは昇進の機会を蹴ってきた為とされていて、惑星警察内での評価は高そうです。
 指令という肩書きではあるものの、未だ指揮よりも事件現場に出るのが好きなようで、部下であるヒロインのジョオン・ランドールと共に登場することが多いですね。もしかしたらジョオンは、そうした性格のエズラに対するお目付役でもあるのかも(^^;)
 年齢が上でも尊大ぶった様子はなく、キャプテン・フューチャーに対しても気さくに話しかけます。カーティスも百戦錬磨のエズラを対等の存在と考えてるようです。あまり一般人との接点がないカーティスにとって、エズラは得難い友人なのでしょう。
 また、仇敵である宇宙海賊の中にすらエズラに敬意を払っている者もおり、その人となりが伺えます。彼自身がスペースオペラのヒーローに近い存在だったのかもしれません。

この記事へのコメント

  • X^2

    脱出するための宇宙船をゼロから作ったり、怪しげな「太陽系のロッシェ限界」が登場したりと、この話はシリーズのうちでも荒唐無稽度が高いですね。前者は無人島ものと同じネタですが、これに限らず多くのスペオペの宇宙は、結局「大きく広がった地球」でしかない気がします。
    ところで、この小天体は冥王星よりさらに太陽から遠いわけですが、寒くないんでしょうか。そもそも昼が存在するんですかね。
    2009年02月28日 20:56
  • Manuke

    ストーリーは緊迫感があって良いのですけど、科学考証は杜撰ですねー(^^;)
    一応、太陽は星とほとんど明るさが変わらないという描写はありますが、そんな状況では植物が光合成できるとも思えず……。
    温度に関しては、「地核の放射性物質から放出される熱」という説明がありました。
    他にも謎なのは、空気の存在ですね。まあ、〈キャプテン・フューチャー〉世界では小惑星の多くには空気があるようなので、気にしちゃいけないのかも。:-)
    2009年03月01日 01:01
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