輝く星々のかなたへ!

[題名]:輝く星々のかなたへ!
[作者]:エドモンド・ハミルトン


※このレビューには前巻までのネタバレがあります。ご注意ください。

 宇宙冒険活劇〈キャプテン・フューチャー・シリーズ〉の九作目です。
 前回の『時のロスト・ワールド』では〈航時推進機〉で別の時代を訪れるという形で世界を広げましたが、今回はいよいよ空間的な意味で舞台が拡張されます。超光速機関・〈振動ドライブ〉を使って、フューチャーメンは太陽系外へと飛び出していくわけです。

 太陽系九惑星のうち、最もサイズが小さい水星には危機が迫りつつありました。重力が弱いために惑星表面から空気と水が失われていき、次第に生存に適さなくなってきたのです。これまでは鉱石から取り出した人工空気でそれを補っていましたが、既にそれも底を尽きかけています。
 この状況を打破するため、太陽系一の天才キャプテン・フューチャーことカーティス・ニュートンは、銀河中心に存在すると予想される〈物質生成の場〉へ向かうことにしました。その秘密を得られれば、無から酸素と窒素を無限に作り出すことができるはずだと彼は考えたのです。
 しかし、銀河の中心へ向かう為には光よりも速く飛ぶ必要があります。カーティスとサイモンは以前の実験結果を元に超光速機関・〈振動ドライブ〉を発明し、これを宇宙艇〈コメット〉の船尾に取り付けました。そして、彼等にとっても未知の世界である太陽系外へと飛び出したのです。
 困難を乗り越え、射手座方向にある暗黒の雲へと辿り着いた一行。〈物質生成の場〉はその雲の中にあります。しかし、そこへ突入した〈コメット〉は、〈物質生成の場〉から流れ出す宇宙塵流の瀑布に翻弄され、大破してしまいます。フューチャーメンの運命やいかに。

 本書の注目ガジェットは、〈振動ドライブ〉です。
 これまで〈キャプテン・フューチャー・シリーズ〉に登場する宇宙船は全て光速度以下のスピードしか出せませんでしたが、今回の〈振動ドライブ〉はその限界を突破するFTL推進機です。
 〈振動ドライブ〉の動作原理は、船尾に装備された駆動リングにより高周波の電磁振動を起こし、その反動で〈コメット〉を推進させるもの、とされています。……なんだか単なる光子ロケットのように聞こえますが、きっと違うものなのでしょう(^^;)
 〈振動ドライブ〉には凄まじい加速が伴うため、同時に〈停滞力場〉発生装置を働かせ、加速を打ち消す必要があります。〈停滞力場〉は停滞力線を投射して原子一つ一つを“固定”することにより、加速度の影響から乗員を守ります。特に言及はありませんけど、その用途を鑑みるに、こちらはもしかしたら〈重力等化機〉と関係があるかもしれませんね。

 太陽系を飛び出し銀河へと進出したキャプテン・フューチャー達は、ここでもまた多数の人間型種族と出会うことになります。これは、前作『時のロスト・ワールド』にて明らかになった、白鳥座のデネブからの移民によるもので、銀河のあちこちに太陽系同様の人間の住む惑星が存在するわけですね。
 但し、大本のデネブ文明は既に存在していません。その滅亡の謎は後の巻で明かされることになります。

この記事へのコメント

  • X^2

    重力の弱い水星の大気が失われてゆくという設定は、現代の視点から見たシリーズ全体の荒唐無稽さからすると、妙に科学的で浮いてみえるほどです。この設定を含んでいるもっと以前のSFがあるのか、それとも「惑星の大気が失われる」という議論が、その当時あったのでしょうか。
    後半の艦隊戦での敵の戦法は、昔読んだときに子供心にも無理があると思いました。回転のこぎりで木を切るのとは違うんですから。
    2009年01月31日 23:03
  • Manuke

    「大気が失われる」で思い付くのは、ジュール・ヴェルヌ氏の『月世界へ行く』ですね。
    水星ではなくて月ですけど、かつて月面に存在していた大気は時が経つにつれ失われたのだという説が登場します。
    同時期の水星を扱ったSFを見ると、当時既に水星には大気がないと判明していたようなので、作中とのギャップを埋める設定だったのかもしれませんね。

    艦隊戦に関しては激しく同意。むしろ両サイドから狙われ放題なんじゃないかと(^^;)
    平面ではない立体を活かした戦法ということなのでしょうが、少々無理がありますねー。
    2009年02月01日 01:00
  • ちいさいおおかみ

    振動ドライブって、実は『宇宙の騎士テッカマン』のリープ航法や『超時空要塞マクロス』のフォールド航法と全く同じものだって事をご存知でしたか?アンドロー・梅田のリープの説明で最初にこの原理を知りましたが、時空貫通衝撃の軽減方法も色々あるんですねぇ。
    2016年07月20日 22:31
  • Manuke

    ふむふむ、それは知りませんでした。
    ただ、「高周波の電磁振動で推進」という説明だと、可視光あたりを指しているように感じてしまいます(^^;)
    2016年07月24日 00:59
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