時のロスト・ワールド

[題名]:時のロスト・ワールド
[作者]:エドモンド・ハミルトン


※このレビューには前巻までのネタバレがあります。ご注意ください。

 宇宙冒険活劇〈キャプテン・フューチャー・シリーズ〉の八作目です。
 これまでは太陽系九惑星に軸足を置いてきたフューチャーメンですが、今回はそこから大きく飛び出し、活躍の場を広げることになります――とは言うものの、空間的にはやはり太陽系内ではありますが(^^;)
 舞台となるのは、一億年前に滅びたとされる謎の惑星カタイン。助けを求める声に応え、キャプテン・フューチャーは時間を遡って救援に向かうのです。

 希有金属を探して小惑星帯を渡り歩く隕石山師の新米少年ブラッド・メルトンは、ある小惑星の上で奇妙なものに遭遇しました。それは、過去の時代から未来へ向けて発せられた、救助を求めるメッセージだったのです。
 メルトンは自分の頭がおかしくなったのかもしれないと疑いつつも、そのメッセージを無視することができませんでした。仲間の誰も信じてくれないと悟った彼は、太陽系で唯一その要請に応えられるはずの天才科学者キャプテン・フューチャーに直接話をするため、月へと向かいます。
 メルトンの説明を聞き、その小惑星へ向かったカーティスは、実際にそれが太古に滅んだ惑星カタインから未来への救援要請であることを確認しました。カタインはかつて火星と木星の間にあり、一億年前に砕けて小惑星になってしまったとされる惑星でした。
 遥か古代からの助けを求める声に応じるべく、カーティスとサイモンは時間を遡る装置〈航時推進機(タイム・スラスター)〉を発明し、宇宙艇〈コメット〉に装備しました。そしてカーティス、サイモン、グラッグ、オットーの四人は、カタインが滅亡する直前の時代へ向けて旅立ちます。
 ところが、目的の時代に到着した途端、〈コメット〉は当時存在していた地球の第二の月に衝突してしまったのです。破損し、不時着を余儀なくされた〈コメット〉が辿り着いたのは、恐竜が跋扈する中生代の地球でした。果たしてフューチャーメンは無事〈コメット〉を修理し、カタイン救出へ向かうことができるのでしょうか。

 本書の注目ガジェットは、惑星カタインです。
 カタインは火星と木星の間にあったとされる惑星で、〈キャプテン・フューチャー・シリーズ〉の世界では、これが爆発四散した残骸が小惑星帯なのだという設定です。これと同様の設定は他のSFでもよく見かけますね。
 これらの元ネタはおそらく、各惑星の軌道半径に関するティティウス・ボーデの法則だと思われます。この法則に現実の太陽系を当てはめると、火星と木星の間にはもう一つ惑星があったのではないかという説が出たわけです。もっとも、現在の天体力学では、小惑星帯は木星の重力により惑星の形成を阻まれたものと考えられており、ティティウス・ボーデの法則自体も単なる偶然だったと見なされているようです。
 作中のカタインは“黄金の星”とも呼ばれ、植物や土壌、海等の配色が黄色系統に寄った美しい惑星とされています。但し、軌道が木星と接近していることが原因となり、フューチャーメン到着後二ヶ月足らずに迫る次回の大接近の際には惑星自体が崩壊してしまう運命にあります。

 今回のお話は時間旅行が核となっていることもあり、タイム・トラベルが救出劇に一役買っている部分がなかなか面白いです。いわゆるタイム・パラドックスのように時間移動に伴う矛盾を突くようなものではありませんけれど、仕掛けとしては凝っていると言えるのではないでしょうか。
 ただ、カタイン脱出までの準備期間が短いことに焦る理由は良く分かりません。タイム・トラベルが可能である以上、期間の短さはあまり問題にならないような気がしますし。作中で語られない〈航時推進機〉の制限事項があるのだろう、と納得しておくのが良いのかもしれません。:-)

 また本作では、シリーズ後半で重要な意味を持ってくる、デネブ関連の話題が初登場します。〈キャプテン・フューチャー・シリーズ〉の太陽系九惑星には全て人間型種族が住んでいますけど、これらが全て白鳥座α星デネブからの移民の子孫だったという設定です。
 太陽系のどこへ行っても地球人そっくりの生物が存在し、良く似た言語を話している理由は、超古代のデネブ文明という共通の祖先があったからという訳です。もっとも、言語学の天才であるカーティス君の手にかかれば、全くの異星人であろうともたちまちコミュニケーション可能になってしまうわけですけど(^^;)

この記事へのコメント

  • X^2

    カタインの破片の行方で、木星にぶつかって溶岩の海(大赤斑)と、第二の月を粉砕してその破片がつきに降り注いでクレーターに、というのは覚えているのですが、他にも何かありませんでしたっけ?土星の輪もそうだったかな?
    一億年の過去から現在に戻る前にもっと過去を垣間見るという展開は、ウエルズの「タイムマシン」の逆パターンなわけで、一種のオマージュなのかもしれませんね。
    2009年01月24日 20:27
  • Manuke

    土星の環もそうです。今回のエピソードはそうしたネタの繋がりが面白いですね。
    現実にも、土星の環は衛星が破壊されてできたものではないかと言われますから、(カタインや大赤斑はともかく(^^;))この部分は科学的にも間違っていないのは興味深いです。
    『タイム・マシン』との関連性は気付きませんでしたけど、言われてみればそうかも。
    2009年01月25日 00:37
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