透明惑星危機一髪!

[題名]:透明惑星危機一髪!
[作者]:エドモンド・ハミルトン


※このレビューには前巻までのネタバレがあります。ご注意ください。

 宇宙冒険活劇〈キャプテン・フューチャー・シリーズ〉の七作目です。
 今回のお話はカーティス・ニュートン最大のライバル、〈火星の魔術師〉ウル・クォルンの逆襲ですね。『太陽系七つの秘宝』でフューチャーメンの活躍により逮捕されたはずのウル・クォルンですが、再び太陽系に舞い戻って新たな野望を抱きます。キャプテン・フューチャー達は果たしてその悪事を食い止めることができるでしょうか。

 冥王星の衛星ケルベロスにある太陽系刑務所。ここには九惑星で犯罪を犯した凶悪犯達が収監されていました。
 その一人ウル・クォルンは、かつて“神秘の石”を巡る事件でキャプテン・フューチャーと対峙し、彼に破れた悪の天才科学者でした。しかし、ウル・クォルンは未だその野望、そしてカーティス・ニュートンへの復讐心を捨ててはいなかったのです。
 先に刑期を終えて釈放された恋人の火星娘ヌララの手引きで、ウル・クォルンは刑務所の囚人達を連れて脱獄を果たします。そしてあちこちの研究所を襲撃し始めたのです。突如虚空から現れ。そしてかき消すようにいなくなってしまう宇宙船に手も足も出ない惑星警察は、キャプテン・フューチャーに助けを求めることにしました。
 ウル・クォルン脱獄とその後の事件についてのあらましを聞いたカーティスは、脱獄の少し前に起きた事件に注目します。それは土星人科学者スカル・カーが殺された事件で、ヌララらしき女が関与していたのです。
 スカル・カーの経歴を調べると、彼は併列宇宙の研究に没頭していたことが判明しました。カーティスは、姿を消す宇宙船が併列宇宙へ出入りしているのではないかと推測します。そして、ウル・クォルンの根城が天王星の洞窟内にあることを突き止め、そこへ乗り込もうとするのですが……。

 本書の注目ガジェットは、併列宇宙です。
 〈キャプテン・フューチャー・シリーズ〉では、人々の暮らす場所とは別の世界がしばしば登場します(『太陽系七つの秘宝』の極微宇宙もその一つ)。併列宇宙はその典型的な例ですね。
 時空間の四つの次元とは別の、第五の次元によって隔てられた世界とされており、双方の世界の物質(恒星とか惑星とか)が関連しているということはない模様です(いわゆるパラレル・ワールドとは異なり、全くの別世界)。こちら側の世界で惑星のある位置は、向こう側では宇宙空間であるため、異次元空間移動宇宙船を手に入れたウル・クォルンは太陽系中のどんな場所にでも侵入可能となってしまうわけです。
 この併列宇宙にもまた、人間が住んでいます(地球人との関係は不明)。彼等はある経緯から、〈宇宙の宝石(コズミック・クリスタル)〉と呼ばれる結晶を作り上げて惑星全体を透明化しており、この影響圏内に入ったものは全く目に見えなくなります。周囲の光景はおろか、自分の体すら透明になってしまい、見えるのは宇宙・太陽・星だけという大変奇妙かつ不便な状況ですね(^^;)

 〈キャプテン・フューチャー・シリーズ〉には、ヒロインの惑星警察機構諜報員ジョオン・ランドールが登場します。第一作『恐怖の宇宙帝王』でカーティスに出会い、すっかり惚れ込んでしまったようで、以後は好き好き光線全開状態です(笑) カーティスも当初はジョオンの態度に戸惑っていたようですが、回が進むにつれ彼女を愛するようになっていきます。
 しかしながら、メインヒロインであるにも拘らずジョオンの影が薄いのは残念なところです。彼女がストーリー展開に絡んでくることはあまり多くなく、一度も登場しない回もあります。かつ、有能な諜報員という設定とは裏腹に、ジョオンのせいでフューチャーメンがピンチに陥ることもしばしばですし。驚いたときに悲鳴を上げるというのは、諜報員としての適性に少々欠けるのではないかと感じるのですけど(^^;)
 今回のお話ではゲストキャラクタとして、フューチャーメンに憧れる少年ジョニー・カークが作中に登場します。物語における活躍や個性の面で、準レギュラーであるジョオンよりも一作限りのジョニーの方が目立っているのは、ターゲットの読者層をある程度反映しているからでしょうか。

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