謎の宇宙船強奪団

[題名]:謎の宇宙船強奪団
[作者]:エドモンド・ハミルトン


※このレビューには前巻までのネタバレがあります。ご注意ください。

 宇宙冒険活劇〈キャプテン・フューチャー・シリーズ〉の六作目です。
 今回の敵はこれまでとは異なり、自ら名乗りを上げたりはしません。太陽系を支配するといった大それた野望も持っていないようです。手段こそ尋常ではないものの、どちらかと言えば営利を目的とする普通の犯罪者ですね。
 本筋はシンプルな犯人探しですけど、そこに蛸人(異星人)や太陽系一周レースといったガジェットを絡めることで飽きさせない展開になっている点が面白いですね。特に、ポンコツ宇宙船を騙し騙し駆使しながらレースに挑む場面はスピード感があります。

 水星にある、新型宇宙船のテストを行うための試験飛行基地――危険を伴うことから自殺基地の異名を持つその場所では、怪事件が起きていました。
 テストパイロットが新型船の試験飛行を行っている最中に、いつの間にか宇宙船が盗まれるという奇妙なことが頻発していたのです。先刻まで船を操縦していたはずのパイロットが、ふと気付くと何もない宇宙空間に(宇宙服を着たまま)浮遊していて、ロケットがどこにも見当たらない、という奇怪な状況でした。
 さっぱり訳が分からない自殺基地の関係者達ですが、このまま宇宙船盗難事件が続けば、宇宙船会社は潰れてしまいます。彼等は惑星警察機構指令のエズラ・ガーニーに事件解決を要求し、その結果キャプテン・フューチャーに出動を要請することになりました。
 しかし、そのフューチャーメンにも宇宙船強奪団の触手が伸びていました。所用で〈コメット〉に乗っていたオットーが、宇宙艇ごと盗まれてしまったのです。
 盗まれたオットーと〈コメット〉を取り戻し、強奪団がかつて発明者に反乱を起こしたとされる機械人間と関連があることを突き止めたキャプテン・フューチャー。しかし、未だその真犯人は謎のままです。
 そこでカーティスは、ある大胆な作戦に出ます。新任パイロットのレイ・バレットに扮し、自殺基地へ潜入捜査することにしたのです。

 本書の注目ガジェットは、蛸人です。
 体に鱗があり四本の触手を持つ知的生命体で、既に『暗黒星大接近!』にて登場しています。〈宇宙のサルガッソ海〉で難破していた宇宙船の中にいた、血液を吸う異星人ですね。
 今回、カーティスは緊急避難として〈宇宙のサルガッソ海〉へ入り込むことになり、そこから脱出するために蛸人を再び蘇らせます。
 蛸人達の太陽は死にかけており、彼等は移住可能な別の星系を探して宇宙を探検中でしたが、栄養源である血液がなくなってしまい、永い眠りに就いていたとのことです。カーティスは蛸人に合成血液を作ってあげる代わりに〈宇宙のサルガッソ海〉脱出を手伝ってもらう、というわけです。
 『暗黒星大接近!』では血を吸う怪物として登場した彼等ですが、本作では気のいい人々として描かれます。残念ながらこのエピソード以後は登場しませんが、〈キャプテン・フューチャー〉世界の銀河には人間の文明圏とは異なる異星文明もちゃんと存在しているようです。

 フューチャーメン最後の一人はサイモン・ライト、別名〈生きている脳〉("The Living Brain")です。(個人的に一番お気に入りのキャラクターです)
 透明な金属ケースに収められた脳髄のみの存在という、キャプテン・フューチャー一行の中でもひときわ異彩を放つ人物ですが、グラッグやオットーとは異なり元々は人間です。病に冒された老科学者の脳を摘出し、生き長らえさせたものですね。
 四角い箱には、脳の生命活動を維持する装置、一対のフレキシブルパイプの先に付いたレンズの“眼”、人工の口や耳が取り付けられています。
 シリーズの序盤では移動能力を持たず、もっぱらグラッグに指図して雑事を行わせていたようですけど、この『謎の宇宙船強奪団』から磁力ビームが装備されます。これにより、自在に空を飛んだり、ビームで物を掴んだりすることができるようになりました。特に移動能力は非常に高く、単独で惑星間を渡ることができるほどです(^^;)
 カーティスの父ロジャーと共同でグラッグとオットーを生み出した生物学者であり、なおかつそれ以外の様々な分野にも精通している天才です。冷静沈着、深い洞察力で仲間に助言を与える、文字通りの「ブレイン」ですね。しかも、磁力ビーム装備後は射撃や宇宙船の操縦までこなせるようです。
 感情を滅多にあらわにしないと設定されているようですが、実は結構怒りっぽく、グラッグとオットーの喧嘩にしばしば腹を立てています(笑)
 また、サイモンはカーティスを「坊や(ラッド)」と呼んで実の息子のように愛しています。これはカーティスの側も同じで、普段は危険をものともしない彼も、サイモンが危機に陥ったときは激しく動揺するようです。二人は固い絆で結ばれている訳ですね。

この記事へのコメント

  • X^2

    この話のジュブナイル版では、解決部分がかなり違っていた記憶があります。確かレースでCF+オットーが乗った船が元と異なり、レース中の故障を直そうとエンジンを分解したら、部品が他社のものを使っているのを発見する・・・という展開でした。これに限らずジュブナイル版は元と話が大きく変えてあるときがあるのですが、著作権等の問題にはならないんでしょうか?
    それからあのレースですが、年によって惑星の位置が変わるので、場合によっては天王星と海王星が太陽の反対側で、その90度ずれた方向に冥王星が、とかなったらかなり大変そうです。
    2009年01月10日 13:42
  • Manuke

    むむ、そんな変更がされていますか。結末に影響が出てきそうな……。
    ただ、翻訳に際しては著作権者に筋を通していると思われますので、大丈夫じゃないでしょうか。多分ですが(^^;)

    レースに関しては私もそう思いました。本巻に限らず、外惑星同士が内惑星-外惑星間よりも離れている可能性をあまり考慮していない感じです。
    2009年01月11日 00:37
  • ちいさいおおかみ

    "教授"事プロッフ(Prof)・サイモンですねぇ。アニメでは「サイモン教授」と云う呼ばれ方で慕われてましたねぇ。依頼者であるカシュー主席からも、ガーニィ司令からもそう呼ばれていた気がします。
    2016年07月20日 22:25
  • Manuke

    サイモンは良いキャラクタですよね。
    そこそこ高齢と思われますけど、寿命はどうなんでしょう?
    もしサイモンが亡くなると、フューチャーメンの暴走を止められる人がいるのか心配になります(^^;)
    2016年07月24日 00:48

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