脅威! 不死密売団

[題名]:脅威! 不死密売団
[作者]:エドモンド・ハミルトン


※このレビューには前巻までのネタバレがあります。ご注意ください。

 宇宙冒険活劇〈キャプテン・フューチャー・シリーズ〉の四作目です。
 今回、太陽系に迫る新たな危機は、〈生命王〉の魔の手です。その性質故に数多くの人々を虜にする悪魔の薬〈生命水〉。フューチャーメンはその恐るべき麻薬の蔓延を阻止できるのでしょうか。

 〈生命水〉なる薬が、密かに太陽系内へ広まりつつありました。それは、ひとたび飲めばたちまち肉体が若々しさを取り戻す回春・不老不死の薬という謳い文句のものでした。
 老いを厭い、若さを求めるのは世の常です。誘惑にそそのかされた金持ちの老人達は、それを買い求め、事実〈生命水〉はその通りの効能を示します。
 しかし、そこには罠が仕掛けられていました。ひとたび〈生命水〉を飲んだが最後、それを定期的に摂取しないと急激に老化して死んでしまうという強い習慣性があったのです。そして、密売人は値段をつり上げ、被害者から金を搾り取ったのでした。
 〈生命水〉の蔓延を食い止めるよう要請されたキャプテン・フューチャーは、密売シンジケートの元締と目される人物〈生命王〉へ近づくべく、オットーを金持ちの老人に変装させて密売人を罠にかけようとします。しかし、敵もさるもの、変装を見破られ逃げられてしまうのでした。
 アプローチ方法の変更を余儀なくされたカーティスは、〈生命水〉が太陽系の各所に伝わる〈命の泉〉の伝説に関係があるのではないかとの推理を進めます。その泉から湧き出る水を飲むと若さを取り戻せるという信憑性の低いおとぎ話でしたが、危険を冒して火星の古代都市〈機械の都〉へ乗り込んだキャプテン・フューチャーは、それが土星にあるらしいとの手がかりを得たのです。

 本書の注目ガジェットは、〈生命水〉です。
 〈生命水〉は、とある特殊な状況下で放射性物質と接触した結果、特殊な性質を帯びるようになった湧き水です。どんな物質なのか、どう作用するかに関しての説明はありません(笑)
 あらすじで記したように、〈生命水〉を飲むと即座に老人の体が若者へと変化します。但しその反面、〈生命水〉が切れてしまうと数分で命を落としてしまいます。
 それ以外の害はなさそうで、〈生命水〉の湧き出る〈命の泉〉の近くには〈永遠の若者の町〉が存在します。〈生命水〉を飲んで若さを取り戻したものの、それを切らすことができないため永遠にそこへ虜になってしまった不老不死の人々で構成される町です。
 作中では、〈生命水〉は恐るべき毒薬として扱われ、〈永遠の若者の町〉は絶望に満ちた場所として描かれます。しかし、密売人にカモにされてしまった中毒者はともかく、〈永遠の若者の町〉はそんなに悲観することもないような気が個人的にするのですが(^^;)
 〈キャプテン・フューチャー・シリーズ〉の中では、他にも「永遠の命」が登場する回がありますけど、いずれもそれは否定すべきものとして捉えられているようです。ハミルトン氏のスタンスでしょうか。

 フューチャーメンの一人、オットーは合成アンドロイドです。
 カーティスの父ロジャー・ニュートンとサイモンが協力し、グラッグに続いて生み出した人工生命ですね。外観は機械であるグラッグよりも人間に近く、チョークのように白い肌と緑の目、毛髪のない頭が特徴です。
 グラッグのような頑強さには欠けるものの、オットーには特殊能力があります。皮膚を一時的に柔らかくするスプレー、そして皮膚や目の色を変化させる染料を使い、どんな人間にも化けられる変装能力です。更に、敏捷さにおいてはフューチャーメン随一であり、〈コメット〉の操縦やプロトン砲の発射といった場面で活躍を見せます。
 少々お調子者で、羽目を外したためにフューチャーメンを危機に陥らせることもあります。兄弟分であるグラッグとは非常に仲が悪く(内心では互いを信頼し合っていますが)、両者の口喧嘩は大抵オットーが発端のようです。
 また、グラッグが月犬のイイクを飼っていることに対抗して、オットーも隕石モグラのオーグをペットにします。オーグはオットーに似て、なんにでも変身する能力を有します。飼い主同士は喧嘩ばかりですが、オーグとイイクは仲良しのようです。
 本人は剛胆な性格を装っていますが、グラッグの頑強さをうらやんだり、人間と異なることにコンプレックスを感じていたりと、繊細な点も併せ持ちます。フューチャーメンの中における、ムードメーカー的存在ですね。

この記事へのコメント

  • X^2

    第一作からここまで、舞台となる惑星が木冥海土と入れ替わり、惑星漫遊の感があります。個人的にはこの話に関しては記憶が曖昧で、古代火星人が天王星以遠には到達できなかった、という一節があったのは覚えていますが、「機械の都」訪問などは忘れていました。
    確か「海底都市」の中で「土星には海がない」と触れられていた記憶があるので、この世界で一番陸地面積が広い惑星は土星かもしれません。もしそうなら、「永遠の若者の町」の存在がほとんど知られていなかったのも不思議は無いかも。
    2008年12月30日 17:16
  • Manuke

    土星には超広大な草原地帯があるという設定のようですね。
    大雑把な地図(笑)から類推して、仮に陸地の半分が草原だったとすると、中央アジアのグレート・ステップの二万五千倍に相当するようです。さぞかし雄大な眺めなのでしょう。
    一応カーティス君が草原を八本足の馬で走るシーンもありますけど、いつものごとくストーリー展開が早いせいで今一つ雄大さが感じられないのは残念なところです(^^;)
    2008年12月31日 01:02

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