挑戦! 嵐の海底都市

[題名]:挑戦! 嵐の海底都市
[作者]:エドモンド・ハミルトン


※このレビューには前巻までのネタバレがあります。ご注意ください。

 宇宙冒険活劇〈キャプテン・フューチャー・シリーズ〉の三作目です。
 ザロ博士の手から太陽系を守ったキャプテン・フューチャーですが、その前に更なる悪人が立ちはだかります。
 今回の敵の名は〈破壊王〉。しかし、その荒っぽい呼び名とは裏腹に、かなりの知能犯のようです。
 貴重な金属グラヴィウムの鉱山を次々と襲う〈破壊王〉。その真の意図、そして〈破壊王〉の正体をキャプテン・フューチャーは突き止めることができるのでしょうか。

 太陽系の交易に欠かせない装置の一つに、〈重力等化機〉がありました。太陽系九惑星の重力はそれぞれ異なり、ある星で生まれた者が別の星へ赴くことには相当の困難が伴います。しかし、この〈重力等化機〉があれば、旅行者は宇宙のどこであろうとも生まれ故郷の星に等しい重力へ調整することができるのです。そして、この〈重力等化機〉製造に欠かせないものが、希少金属グラヴィウムでした。
 ところがあるとき、水星・火星・土星にあるグラヴィウム鉱山が次々と襲撃され、破壊されるという事件が発生します。ジェイムズ・カシュー主席は北極の信号灯台を用いてキャプテン・フューチャーに助けを求めようとしたのですが、襲撃犯はそれにも先手を打っていました。月面の研究所から、事もあろうにカーティス・ニュートンを誘拐しようとしたのです。
 しかし、そこは我等がキャプテン・フューチャー。催眠術と科学的機転を駆使して悪人の手から逃れると、カシュー主席に連絡を付け、悪の首謀者とおぼしき〈破壊王〉なる人物の野望を挫くことを約束します。
 けれども、そんなキャプテン・フューチャー達の目前で、新たに天王星の鉱山が破壊されてしまいました。後に唯一残されたのは、広大な海洋に覆われた海王星の海底鉱山のみです。〈破壊王〉の魔手から太陽系を守るため、フューチャーメンは海王星を目指すのですが……。

 本書の注目ガジェットは、〈重力等化機〉(グラヴィテーション・イコライザー)です。
 作中に登場する謎の金属(笑)グラヴィウムで作られたコイルに電流を流すと、電流の極性により周囲の物体の重量が増減するという性質を利用したものだとされています。
 例えば、木星の重力は地球の倍以上ですし、火星は逆に半分以下ですが、この〈重力等化機〉を身に付けていれば地球人はどこでも一Gで動き回ることができる訳ですね。もちろん、他惑星人はそれぞれの惑星の標準重力に合わせることも可能です。
 別の値に調整された〈重力等化機〉を装着している者同士が握手したらどうなるのかとか、無重量状態で使ったら物体はどこへ向けて落下するのかとか、色々と疑問は浮かびますけど、その辺りはとりあえず置いておくことにしましょう。あまり矛盾を感じさせない上手い説明(=屁理屈)が可能かもしれませんし。:-)
 但し、個人的には納得がいかない部分もあります。この〈重力等化機〉、簡単にオン・オフすることができるようで、実際にアンドロイドのオットーがお遊びで〈重力等化機〉を切って高くジャンプする場面まであります。にも拘らず、フューチャーメンが苦境に陥ったときに〈重力等化機〉を調整するという発想が出てこないのは不思議です(^^;)

 カーティスに従うフューチャーメンの中で、最も頑強なのが鋼鉄製ロボットのグラッグです。カーティスの父とサイモンが生み出した二人の人工生命のうちの一人ですね。
 身長二メートルを超す巨躯で怪力無双、真空をものともしない強靭さでキャプテン・フューチャーをフォローする心強い仲間です。
 同じ人工生命でありながらアンドロイドのオットーとは非常に仲が悪く、寄ると触ると口喧嘩ばかりしており、カーティスやサイモンに怒られることもしばしばです。もっとも、危機に臨んだときは二人で絶妙のコンビネーションを見せる場面もあり、喧嘩は半ばレクリエーションのようですが。
 グラッグはペットとして月犬(ムーン・パップ)のイイクを飼っています。月に棲息する生物の子供で熊に似ており、非常に臆病ですがグラッグには懐いているようです。テレパシー能力でフューチャーメンの危機を救うこともあれば、逆に重要な金属を食べてしまってトラブルを引き起こしたりもします。
 そのごつい外見とは裏腹に、グラッグの内面は少しばかり繊細――と本人は主張しています。とは言うものの、制作者の一人であるサイモンはまるで意に介さない様子ですけど(^^;)

この記事へのコメント

  • X^2

    この世界でも冥王星は極寒の惑星ですが、すぐ内側の海王星は特に「寒い」描写がない点は、かなり違和感があります。このシリーズの場合、「巨大惑星なので内部からの熱量が大きい」といった、一見科学的な説明がされているとも思えないし。
    > フューチャーメンが苦境に陥ったときに〈重力等化機〉を調整する
    これは今まで気がつきませんでしたが、ご指摘の通りですね。それどころか、一般人も装置の調整が可能なら、エレベータも不要ですね。
    グラックの身長ですが、3mという記述もありませんでした?ただ3mもあると、後の話にあるように人間に変装するのも無理だから、やはり2mが正しいのでしょうか。
    2008年12月28日 11:17
  • Manuke

    確かに(^^;) 単に名前("Neptune")から来た設定なんでしょうね。
    ただ、木星に関しては、例の惑星紹介で「木星内部の放射性物質により人間に快適な温度まで暖められている」とありますから、海王星もきっとそうなのでしょう。
    水星と冥王星以外はほぼ同じ温度というのがちょっとご都合主義ではありますが(笑)

    〈重力等化機〉はもっと便利に使えそうですよね。常時動作させている以上、エネルギー消費も小さいでしょうし。
    一応、アニメ版(重力コントローラだったかな?)と野田大元帥の番外編には、〈重力等化機〉を使うシーンもあるのですけど。

    グラッグは作中では七フィートと記述されていました。きっかりの数字かどうかは分かりませんが、三メートルは行かなそうです。
    アニメ版の身長はどうだったかな?
    2008年12月29日 00:18
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