暗黒星大接近!

[題名]:暗黒星大接近!
[作者]:エドモンド・ハミルトン


※このレビューには前巻までのネタバレがあります。ご注意ください。

 宇宙冒険活劇〈キャプテン・フューチャー・シリーズ〉の二作目です。
 〈宇宙帝王〉の正体を暴き、その邪悪な目的を阻止することに成功したキャプテン・フューチャーですが、新たな脅威が太陽系を襲います。
 今回の敵は、謎の怪人ザロ博士。正体不明のこの人物は、巨大な暗黒星が太陽系に迫っているという情報で人々をパニックに追い込み、太陽系の支配権を得ようと目論みます。その恐るべき野望を阻止すべく、フューチャーメンは再び出動するのです。

 ある日、唐突にテレバイザー(テレビ電話のようなもの?)が電波ジャックされ、太陽系全域に対して謎の人物が警告を発するという事件が起きました。
 秀でた額を持つ異様な雰囲気の男はザロ博士と名乗り、射手座の方角から太陽系へ暗黒星が接近中だと告げたのです。大質量の死んだ恒星を放置すれば太陽系を破滅に追いやることになり、それを回避することができるのは自分だけだ、と。
 当初はほとんどの者がそれを信じようとしませんでした。けれどもザロ博士の言った通り、射手座の方向に暗黒星らしきものが発見されます。天文学者はそれが危険のないものだと表明しましたが、人々は次第に疑心暗鬼に駆られていきます。その間も、ザロ博士は幾度も電波ジャックを繰り返し、自分に太陽系の支配権を渡さねば九惑星が滅亡するだろうと不安を煽ったのです。
 そして更に、著名な科学者達が次々と姿を消すということが起き始めました。ザロ博士はテレバイザーで、彼等が破局を避けるため自分達だけ逃げ出したのだと説明します。その結果、多くの人々がそれに騙され、ザロ博士に太陽系の全権を引き渡すべきだと主張し始めたのです。
 この危機に臨んで、ジェイムズ・カシュー主席はキャプテン・フューチャーに助けを求めることにします。呼び出しを受けたフューチャーメンがカシューの下へ駆けつけたちょうどそのとき、金星で天文学者失踪の調査を行っていた女性諜報員ジョオン・ランドールから連絡が入ります。それは天文学者カンス・ケーンがザロ博士の手先〈太陽系防衛団〉に誘拐されたという報告でした。
 ところが、その通信が繋がっている最中、ジョオン自身までもが誘拐されてしまいます。直ちに出発したキャプテン・フューチャーは、〈太陽系防衛団〉の宇宙船からジョオン及びカンス・ケーンを救出し、救命艇で脱出を図ります。
 しかし、一難さってまた一難――彼等の乗る宇宙艇は、一度入ったら出られない恐るべき空域、〈宇宙のサルガッソ海〉に囚われてしまったのです。

 本書の注目ガジェットは、〈宇宙のサルガッソ海〉です(^^;)
 名前の由来はもちろん、大西洋のバミューダ諸島近くにある海藻だらけの海、サルガッソ海ですね。帆船が大西洋を行き来していた時代には、風が弱いことと海藻に絡み付かれて身動きが取れなくなることから船乗りの方々に恐れられたそうです。
 作中に登場する宇宙版は、強力なエーテル流が周囲に流れているため脱出不可能になる、恐るべき宇宙船の墓場です。無数の難破船がそこには吹きだまっており、中には太陽系の住人のものではない異星の船らしきものまで存在します。
 色々とツッコミどころのある設定ですけど(笑)、この〈宇宙のサルガッソ海〉は別のスペースオペラでも時折見かけます。地球の海に存在する脅威をそのまま宇宙へ移し替えただけですけど、真空に閉ざされた宇宙空間では寂寥感もより強く、見栄えがするシチュエーションかもしれません。〈キャプテン・フューチャー・シリーズ〉でも、本書だけでなく後の巻にも登場します。

 キャプテン・フューチャーの愛機〈コメット〉は、小型ながら太陽系有数の能力を誇る涙滴型宇宙艇です。
 船尾には銅を燃料とする強力なロケット、サイクロトロンが装備されています。サイクロトロンと言っても、円形加速器とは名称が同じだけで関連性はなさそうですが(笑)
 また、〈コメット〉はその名前通りの特殊装置、噴射管からキラキラ光る粒子を放出して機体を彗星に偽装する機能が装備されています。これを使うと、外部からは宇宙船とは分からなくなるため、敵の目を欺くことができるわけです。しかしながら、何もなかった空間にいきなり彗星が誕生したら、思いっきり疑われてしまうような気がします(^^;) だからなのか、この機能はあまり多用されません。あくまで切り札のようですね。
 荒唐無稽な世界観の中では意外なことに、シリーズ序盤では〈コメット〉に超光速移動能力はありません。当初はあくまで太陽系内を舞台としているので、超光速は必ずしも必要なかったということでしょうか。中盤以降では、カーティスとサイモンにより〈振動ドライブ〉が発明され、太陽系の外へと飛び出していくことになります。

この記事へのコメント

  • X^2

    ご承知の通り、キャプテン・フューチャー世界の冥王星には三つの衛星がありますが、現実の冥王星にも現在三つの衛星が知られています。しかも最初に発見された「カロン(Charon) = ケイロン」は同じ名前がつけられているので、2006年に残り二つの衛星が発見されたときに、ケルベロスとスティックスと命名すべきではという議論があったようです。残念ながらNixとHydraと別の名にされてしまいましたが。
    コメットの動力源は銅だったんですね。くしくもスカイラークと同じですが、偶然でしょうか?
    2008年12月20日 16:21
  • Manuke

    神話繋がりでそれほど不思議ではないとは言え、こういう偶然の一致は面白いですよね。
    ヒドラはともかく、ニクスはもう既に使われているものを無理矢理付けたっぽいのが残念(^^;)
    ケルベロス、格好良いと思うのに……。

    スカイラークとの関連は分かりませんけど、ドク・スミスの影響は大きいのかもしれませんね。
    2008年12月21日 00:34
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